石津「確かに日本的。でも、いまの人たちは、できるだけ自分のスタイルはオリジナルでありたいと思うはず。思い切って紫のポロシャツを買おうという気になっても、こんなにたくさんあるならちょっと……、と逆効果にならないかな」
コロナ後、ルームウエアがヒット
――1階の売り場はカラーの多様性や商品構成の幅広さを消費者に伝える実験台でもあるようです。
石津「あそこのマネキンのコーディネートは使う色を極力少なくしてまとめているでしょう。あれがいいんですよ。僕は、男の服はモノトーンとブルー以外の色はいらないんじゃないかと思うくらいなの。差し色はネクタイや靴下だけにとどめて、全体の色を抑えるやり方。実は色を使いすぎると、色のほうに意識がいってしまって、コーデがばらばらになってしまう危険性があるんです。表参道に集まる人を見ていても、着こなしが練られている人は少ない色を巧みに使う。そういう教育をユニクロさんならできるはず」

――コロナで服に対する意識が変わりました。売り場でもそうした変化を感じますか。
工藤「ユニクロは以前からマロニエゲートに入居していましたが、かつてのピークタイムは18時から20時でした。いまは16時から17時になるとお客さまが来なくなります。早く帰宅するようになったんですね。ルームウエアがヒットしていることからも、生活スタイルの変化がうかがえます」
――こちらでは無縫製のニットの製造工程やエアリズムの機能性をまるでインスタレーションのように展示しています。面白いしかけで機能を「見える化」しています。
工藤「機能性とファッションとアートを積み重ねてつくった体験の場といえます。今回はエアリズムですが、展示内容は順次変えていき、ものづくりのこだわりを感じてもらえるコーナーのようにしていきます。興味を持ってくださるお客さんが集まるんですよ」

石津「面白い仕掛けですよね。さらに一歩進んで、こうした展示をやるなら、『人間』『心』を伝えてほしいなと思います。素材や機能を伝えようとすると、科学的な視点になってしまうでしょう。機能はもう十分。アフターコロナは、気持ちなり心なりを刺激するような服が大事になるのではないかと思う。心で引きつける服なんていいじゃない」

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