「天からの手紙」を解読 雨か雪か、雲の科学で考える気象庁 気象研究所 荒木健太郎(2)

これだけを聞くとまさに五里霧中なかんじがするが、実は、先行研究とも呼べるかもしれない事例が、アメリカにあるのだそうだ。

気象庁気象研究所研究官の荒木健太郎さん

「関東平野というのはアメリカの東海岸と地理的な特徴がよく似ているんです。北米の東海岸にはアパラチア山脈という山脈がありますが、それがちょうど日本の脊梁山地に対応していて、やっぱり向こうでも温帯低気圧の通過に伴って雪が降るということが知られてます。その時に、効いてくると言われているのが、コールドエア・ダミング(Cold-Air Damming)と言われる現象です。これが発生すると、北寄りの冷たい風が強化されるんです」

コールドエア・ダミングは、近いうちにニュース番組のお天気コーナーでも言及されることになるかもしれないキーワードだ。「ダミング」というのは、冷たい空気の塊が「ダム」にためられるようなイメージだろうか。もっとも実際に空気が滞留するわけではなく、入ってきた冷たい東風は、東北から関東北部まで貫く奥羽山脈や越後山脈に阻まれて、南向きに転向する。つまり関東平野に流れ込む北寄りの冷たい風が強化される。これが雪の降る環境に影響を与えているらしい。

「2014年2月の豪雪では、まさにコールドエア・ダミングが発生しているところに南岸低気圧がやってきた例でした。ただ、コールドエア・ダミングが発生すればぜんぶ雪かというとそんなに単純ではなくて、結局、大きな場でどのくらい強い寒気が南下してきているかや、沿岸前線の位置によって雨か雪かはガラッとかわってきます」

川端裕人さん

本当にややこしい。だからこそ予測が難しい。

すごく直観的な言い方をするなら、関東地方に降雪をもたらすほど冷やすためには、まずは大規模な寒気の輸送があり、その上でコールドエア・ダミングのように関東を局所的に冷やすためのメカニズムが必要ということなのだろう。しかし、強烈な寒気が南下してきているわけでもない場合には、これだけでは決定的ではなくて、その時にやってきた南岸低気圧や低気圧に伴う雲の状態、地上の状態などで、雨になるか雪になるか変わってしまう。雲の中で起きていることや地上に落ちてくるまでのプロセスが逐一、効いてくる。つまり、最後の最後までどっちに振れるか分からない。

結局、雪になる条件を知るためには、雲の中を観測して現象を知る必要がある。具体的にどんな方法があるだろうか。

「雲の中に入って直接観測をしたいんですが、それがなかなか難しんです。やり方としては、航空機で中に入ったり、雲粒子ゾンデという特殊な観測機器を気球で上げて、画像データを解析したりするんですけど、やっぱり大がかりになるので、なかなかこういう観測はできません。そこで実態把握のために始めたのが、雪の結晶の観測なんです」

雲の中を知るには、どんな方法があるだろうか

ここでやっと、地上に落ちてきた雪の結晶にまでたどり着いた。

「雪は天から送られた手紙であるという言い方があるじゃないですか。あれは、20世紀の先駆的な雪研究者、中谷宇吉郎博士が残した言葉なんですが、実際に地上に落ちてきた雪を見ていると、それが落ちてくるまでにどんなことが起きたのか分かるんです。雪っていろんな結晶があるのをみなさんご存知ですよね。それによって、雲の中が分かるということです」

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