思わぬところにリスクも トイレとウイルス感染の関係

日経ナショナル ジオグラフィック社

「物理的に他人との距離を取り、丁寧に手洗いをして公共トイレを使うことは、よその世帯の人々と集まったりするよりもほぼ確実にリスクが低いはずです」と、アミリアン氏はメールに書き、こう強調する。「新型コロナウイルス感染症の主な感染経路は、呼吸器からの飛沫を介した人から人への感染です」

身を守るためには何をすればいい?

とはいえ、「リスクが低い」というのは「リスクがない」ことと同じではない。新型コロナウイルスがどのくらいの時間、便中や物体の表面、空気中などで感染力を保っていられるのかは、まだ科学者たちが解明に取り組んでいる最中だ。

20年4月16日付で学術誌「New England Journal of Medicine」に掲載された論文によると、新型コロナウイルスはステンレススチールの表面で最長2日間、プラスチックの表面で最長3日間、感染力を保つことが示されている。ウイルスを破壊するには、せっけんと水を使うだけでいい。しかし、施設側がきちんと物の表面を拭かなければ、公共トイレは新型コロナウイルスの温床になりうるということだ。

「大便は多くの病原体を含んでいる可能性があること。そして、人は自分で思っているほど手をよく洗えていない場合があること。結局、私たちはそれらのことを覚えておく必要があります」とアミリアン氏は述べる。「新型コロナウイルスの問題に限らず、清潔に保つこと、特に手洗いは重要なのです」

多くの個室があり、人数制限を設けていない公共トイレの場合、人が密集することによるリスクもある。人と人との接触は、今も新型コロナウイルス感染の主な原因なのだ。

米ハーバード大学「建築物衛生プログラム」の責任者を務めるジョー・アレン氏は、職場や学校、家が人の健康に及ぼす影響について研究している。健康への悪影響を調査する際には、「トイレの換気をチェックするようにと必ず伝えています」とアレン氏は言う。換気を改善し、汚れた室内の空気を外へ出すことが、安全を保つ一番の方法だと氏は付け加える。

「(公共の)トイレには必ず換気扇を付け、常に稼働させておくべきです」とアレン氏は言う。

さらに可能であれば、手をかざすだけで使える非接触型の水栓やソープディスペンサー、タオルディスペンサーを設置することも勧めている。

そうした装置がなければ、公共トイレでマスクを装着するようワン氏は助言する。さらに、感染性の病原体を含む恐れのあるエアロゾルが空気中に舞うことを防ぐには、単純に公共トイレの便座に蓋を付けることが最も効果的な方法の一つだと付言する。

「メーカーは、水を流す前に自動的に蓋が閉まるようなトイレを開発すべきです」とワン氏は話した。

(文 SARAH GIBBENS、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年6月23日付の記事を再構成]

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