首都圏から車で気軽に 温泉付き客室がある宿3選
新型コロナウイルスの問題を受け、新しい生活様式を意識した日々が続く。夏休みシーズンを控え、息抜きの場をいかに見つけるか悩んでいる方も多いだろう。一部見直しが加えられた政府の国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」事業もスタートした。そこで今回は首都圏から車でも行け、客室内に温泉を備える近場の3つの癒やしの宿をピックアップしてみた。どこもコロナ感染予防策には知恵を絞っている。
静岡県の伊東温泉にある"温泉づくし花暦の宿"がコンセプトの「星野リゾート 界 伊東」。首都圏からは東名高速道や鉄道などを利用して行けるおなじみの先で、伊東駅からは徒歩約10分で着く。温泉づくしというだけあり、客室の内風呂を含め全館源泉かけ流しだ。露天風呂付き客室も5室ある。古代檜(ひのき)の内風呂に、滝の流れる露天風呂がある大浴場、日本庭園を眺めながらの足湯、さらに屋外には4つの異なる源泉を注ぎ、年中適温の温泉プールまである。
コロナ感染予防対策として、チェックイン時に検温と健康状態のヒアリングを行い、手指を消毒。ゲストに先に部屋に入ってもらい、荷物は後で届ける。星野リゾートでは界の全施設で、大浴場を利用する際は、WiFiにつないで携帯でQRコードを読み込めば、混雑度が施設内どこからでも分かる仕組みを構築、「密」を避け大浴場にも行けるのはありがたい。
その土地の文化を楽しむご当地楽というアクティビティでは、伊豆の名産である椿油(つばきあぶら)づくりが体験できる。2つの部屋に分け、開催回数を1日5回にし、1回の人数を抑えて実施している。温泉と庭園と花をゆったりと楽しめる。
緑濃い箱根の山、強羅に旧三菱財閥岩崎家の別荘という歴史を持ち、素晴らしい庭園を誇るのが「強羅環翠楼」だ。箱根強羅まで首都圏から車でも、電車でもOK。電車利用なら箱根登山鉄道の強羅駅から徒歩約3分で着く。こんもりとした森の中にあり、静かな佇(たたず)まいを見せる。
10室と離れが4室の全14室の木造建築の老舗旅館は、1955年(昭和30年)に昭和天皇、皇后両陛下が宿泊された部屋が今も残り、クリント・イーストウッドもかつて宿泊したことがあるそう。歴史を体験しにいくような魅力も加わる。
チェックインの際は、検温と健康状態のアンケートにサインをして手指を消毒。チェックインは1組ずつで、重なった場合にはフロント横の控えの間で待機し、密を避ける。部屋に入れば、約5000坪の敷地に広がる見事な庭園の眺めが窓いっぱいに広がる。小川や池が点在する庭「華清園」で「密」とは無縁の庭園散策も心地よい。
この庭で湧き出した温泉が箱根強羅の温泉第1号だとか。今は、2本の源泉を引き、かけ流しで柔らかく優しい肌ざわりの弱アルカリ性単純泉の湯を楽しめる。14室のうち9室は客室内に温泉風呂があり、プライベート気分で温泉につかれる。庭を通って奥にある露天風呂も、鳥の声と緑に囲まれた静かな湯だ。
丁寧に旬の素材を使って作られたお料理を楽しみ、湯につかり、自然の中で時を過ごすこと自体が味わい深い日本旅館は、非日常の大人の時間が過ごせる。皿数も多く、くみ上げ湯豆腐や卵焼きなどがホカホカで提供される朝食も、日本旅館ならではの至福の楽しみの一つといっていい。
首都圏から近場の避暑地と言えば、軽井沢を抜きには語れない。車のほか、新幹線も利用でき便利。鉄道利用なら中軽井沢駅からタクシーで約5分、閑静な木立の中で、隠れ家リゾートの雰囲気を漂わすのが「軽井沢マリオットホテル」である。温泉が楽しめるのも魅力になっている。
レストランや露天風呂もある温泉大浴場を備えるメインウイング、全客室が温泉風呂付き客室のノースウイング、一部の客室に温泉も付いた愛犬と泊まれるドッグ対応コテージと3つの宿泊棟からなる。予約時や来館時の検温、健康チェックシートの記入と、チェックアウト時にはフロントに立ち寄らずに出発できる仕組みにしている。インルームメニューもあり、客室内で食事もできる。
プライベートに温泉を楽しみたい人におすすめなのはノースウイング。「軽井沢の森の暮らし」をテーマにしたナチュラルモダンなインテリアで、1階の温泉露天風呂とプライベートガーデン付き客室と、2階の緑を望む温泉ビューバス付きの客室の2タイプ。共に、ベッドスペースの奥に畳みのスペースがあるので寛げる。そして何といっても滞在中、いつでも温泉につかれるのが何よりの魅力。
メインウイングの温泉大浴場・露天風呂は、美肌の湯といわれるアルカリ性単純温泉「小瀬温泉」で、湯上がりがさっぱり、すべすべ。ノースウイングの客室内温泉風呂「塩沢温泉」は、塩分を多く含むカルシウム・塩化物泉で、ぽかぽか温まる保温効果に優れた湯だ。同じホテルで異なる泉質の温泉があるのも面白い。
客室アメニティは、自然素材を使った香りのよさとクオリティーの高さに評価のあるタイのTHANN(タン)。インターナショナルなホテルらしいスマートさと温泉でゆっくりできる日本的な居心地のよさを兼ね備えたホテルだ。
世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスに。東京と米国・ポートランドのデュアルライフを送りながら、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。日本旅行作家協会会員。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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