トップは泣いてたらダメ ウソでも前向きが社長の仕事ほぼ日 糸井重里社長(下)

「僕は貧乏性なので、本当にサボれない。それと、長くフリーで働いていたので、信用がいかに大事か身に染みている。信用のかたまりの中で生きているから、『手を抜いていない』という証拠を分かりやすく見せなければいけない。その1つの方法が毎週1回、全員の前でしゃべることです。面倒くさいですけど、皆の前でウソをつかずに、役に立つことをしゃべろうと思って1週間を過ごすので、自分を律するためにもいいですね」

――社員に何を話すのですか。

「話す内容は色々です。新型コロナで一旦、全員在宅勤務にした後の話はこうでした。『在宅のいいところ、悪いところがある程度分かりました。子どもを託児所に預け一旦家に戻って、そこで洗濯しようがテレビを見ようが寝ていようが、ウチの会社は勤務としてカウントします。そしてすいた電車で会社に来る。これってトータルな健康としてすごくいいと思います」

社長を務める「ほぼ日」は2017年ジャスダックに上場した

「もし1日8時間働いていますかとチェックするような会社になってしまったら、リモートワークする意味がない。隙があることも含めてワークだ、と僕は思っているから、君たちは仕事しているフリをしなくていいよ。そんなことをするくらいだったら、しっかり体を休めて、血色よくなってください。もともと会社にいたって、2時間くらいしか仕事していないんだから』と。最後は冗談ですよ」

「1時間の会議でも、頭を使って必死で考えている時間なんてせいぜい10分ですよ。それを1時間ってカウントするのは間違っています。事実、稼ぐってそこじゃないんですよね。眉間にしわを寄せて働いているところからいいアイデアは生まれない。新型コロナを機会にちょっとずつ、働き方改革を試しています。年内にも東京・神田にオフィスを引っ越す予定ですが、そこでも社員が6割5分くらい出社する感じになると、仕事がしやすいかなと考えています。新型コロナでむしろ、挑戦するチャンスをいただいたと受け止めています」

――失敗だけど糧になった経験はありますか。

「失敗というか、サドンデスに持ち込んじゃう。ウチの仕事はBtoB(企業向け取引)ではないので、『お前のところとの付き合いはこれでおしまいだ』と言われる怖さがほとんどない。売れなかった商品は失敗ですけど、一度こういうことがありました。チェックの長袖Tシャツをつくって、あまり売れなかった。そこで紺色に染めて、上からプリントして『ミスタケ』という小さいブランドにしたんです。ローマ字で書くとミステーク。失敗したんでやり直しました、と言って売ったら在庫がなくなりましたね。会社が小さいので、失敗を機会に面白いことを考える、宿題にするというのができるんです」

フリをしているうちに、社長は育つ

「それと、心が不安になると、健康に考えられなくなっちゃう。僕自身、石橋をたたいて渡るタイプなので、不安があると身を縮めてしまうんですよ。ウチに遊びに来た人はたいてい2種類のことを言います。まず『思ったより静かですね』と。もっと、ピクニックをやっているような会社だと思っているみたい。もう一つが『誰かが笑っていますね』で、確かにその通り。そんなところで組織としてバランスを取っているんで、いい気になることも、心配性になって縮み上がることもなかったんだと思います」

「自分でも落ち込まないようにしています。創業社長は泣いていたらダメ。ディズニーランドにウォルト・ディズニーさんが落ち込んでいる銅像があったらダメですよね。ウソでも『ミッキー、さあ行こう。泣いてなんかいないやい』というのがトップの仕事です。ただ、根拠なくやるわけにはいかないから、勉強するんじゃないですかね。フリをしているうちに、社長って育つんだと思います」

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