アコードの挑戦 ヒットが難しい「大型セダン」の狙い

セダン離れが進む中、ホンダは400万円を超えるラージセダン、10代目アコードを国内投入した。月販目標は300台。大ヒットするとは考えにくい大型セダンを、あえて導入する意図とは何か。小沢コージ氏が直撃した。

月販目標300台のアコードを残したワケ

20年2月に国内発表された10代目アコード。緊急事態宣言の解除を受け、改めて試乗会が行われた

先日、ホンダを代表するラージセダンである10代目アコードの試乗会が行われたのだが、ほぼ同じタイミングで少々意外なニュースが飛び込んできた。シビックセダン、グレイスというコンパクトセダン2車種の生産中止がアナウンスされたのだ。これ、クルマ好きならずともちょっと考えさせられる判断ではないだろうか。

なぜならシビックセダンは、約3年前に鳴り物入りで国内再投入を決めたホンダを代表するビッグネームのひとつ。そしてグレイスはホンダが誇る人気コンパクト、フィットの事実上のセダン版だ。どちらもアコードと比べれば価格は手ごろで、ある程度売れそうな要素を持っているのだ。もちろんセダン離れが進む現在、両車とも国内登録車販売のベスト30にも入らないほど苦戦している。だがモノグレードで465万円からという新型アコードが、この両車種以上に売れるとは思えない。

200万円以下の安いコンパクトセダンなら、手を出す年配客はいるかもしれない。だが今どき400万円以上払うなら、トヨタ アルファードのようなラージミニバンか、ドイツ製のプレミアムセダンを選ぶ人がほとんどだろう。

ホンダもその辺りは認識しており、新型アコードの月販目標は300台と控えめだ。事実、先代アコードの販売実績も導入年の13年こそ年1万台強だったが、2019年は1056台と、月100台も売れてない。ホンダの販売ディーラー数は2000店舗以上あるから、1店舗平均で見ると、年間1台も売ってない計算になるのだ。正直、ビジネス効率が悪すぎる。

どうしてシビックセダンやグレイスを生産中止にしてまで、アコードを導入するのか。そんな疑問を単刀直入にぶつけてみると、こんな答えが返ってきた。

「アコードはホンダブランドを象徴するセダンとして位置付けられています。一方で国内でセダンのラインアップが(リース専用車両を除いて)6車種もあるのは多すぎると認識しており、それを整理するためにアコードを残し、シビックセダン、グレイスを生産終了する選択をしました」(ホンダ広報)

要するにセダンの車種が多すぎるのは重々承知の上で、アコードは「ホンダの顔」だから売り続けるというわけだ。しかし実車に乗ってみると、解せない判断を下したホンダの思いが少しずつ分かってきた。

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