元高校球児のティモンディ お笑いネタも直球で勝負

甲子園常連の名門校・済美高校野球部出身のティモンディ。2019年に『ゴッドタン』(テレビ東京系)の企画「この若手知ってんのか!?」や『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「スポーツ推薦芸人」で注目されて以降、様々なバラエティーで目にするようになった。
とりわけ活躍が目立つのは、身長188センチ、体重90キロで、オレンジ色の衣装がトレードマークの高岸宏行だ。今でも球速150キロを投げられる身体能力の持ち主で、どんな場面でもたっぷりと時間をかけてポジティブなワードを繰り出す姿が笑いを誘う。ブルーの衣装が鮮やかな相方の前田裕太は「高岸の良さを1番知っている僕が、まずは彼の魅力を伝えていきたい」と意気込む。
済美高校の寮で同級生として出会った2人。仲良くなったきっかけは、07年に『M-1グランプリ』で優勝したサンドウィッチマンの話題で「入寮した初日に盛り上がった」(高岸)という。その後、サンドをはじめとする"芸人"の存在が2人にとってさらに大きなものとなったのは、東日本大震災直後のことだった。「ちょうどそれぞれが大学に進学するタイミングだったんですが、サンドさんの復興活動を見て、お笑い芸人ってすごい職業だなという話を2人でしたのを覚えています」(前田)。
野球でプロの道に進めなかった2人は、15年1月にコンビを結成。「子どもの頃からの夢だった、プロ野球でみなさんに勇気を与えることはかなわなかったけど、他の方法で何かできないかと考えたときに、サンドさんのことを思い出したんです。それで大学を卒業する年に、僕から前田を誘ってコンビを組むことにしました」(高岸)。
野球一筋だった2人だけに、芸人を目指すために何をしたらいいかが最初は分からず、「コンビを組んでから1カ月くらいは、池袋の東武百貨店の屋上で、手探りでネタ合わせをしていました」(前田)。やがて、憧れのサンドウィッチマンが所属するグレープカンパニーがオーディションを実施していることを知った2人はすぐに応募し、そのまま合格。「正直、人に見せられるようなネタではなく、面接の作家さんも笑っていなかったんですが、体も大きいしと、スポーツ選手的な扱いで取ってくれたようです(笑)」(前田)、「声は出てるね、とは言ってくださいました」(高岸)。
知名度が上がり、街でも声をかけられるようになったが「野球に例えると高校の地方予選くらい」(前田)、「まだブルペンにも入っていません」(高岸)と。前田が「芸人という職業を意識するようになったのは『M-1』がきっかけでもあるので、『M-1』で勝ち上がれるように頑張りたい。でもまだ結果を出せていなくて……」と語ると「だからこそ、とにかく一生懸命に、どの仕事もベストを尽くすしかないんです!」と高岸は得意のポジティブシンキングな言葉に熱を込めた。
目標は「共演者さんの良さを引き出せる芸人になりたい」と前田。高岸が「どんなに大変な状況でも、みなさんを前向きな気持ちにさせられる芸人になるのが夢」と語ると、前田は「高岸にとって芸人は人を応援する仕事という認識らしいです」と小さく笑った。
さらに、もう1つの目標として「プロ野球の始球式で高岸が投げること」を挙げた前田。こちらはプロ野球が再開した暁には、きっと達成できるはずだ。明るく真っすぐな直球勝負の芸風で世の中を盛り上げてくれることに期待したい。
(日経エンタテインメント!7月号の記事を再構成 文/遠藤敏文 写真/中村嘉昭)
[日経MJ2020年7月10日付]
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