今、自分にできることは何か、社会の変化や流れにどのように自分を適応させたらよいのか、平熱の状態だからこそ、静かに考える力も蓄えられるのです。

確かに、継続していたことが停止すると、とても不安になり、平常心を保つのは困難になります。

星野さんは自身を襲った不安な状況さえも肯定できるようになったとのこと。立ち止まったり、休んだりすることについて、星野さんは著書のなかで次のようにつづっています。

「休んでいても不安は感じない。焦らない。今の自分がいるのは以前の自分のおかげであり、彼(以前の自分)が殻を破ってやろうと必死になって戦ったからこそ、脱皮した自分がのほほんと暮らしていけている。そう思うようになった」

音楽で人に寄り添う気概

そして著書のなかで星野さんは、社会の中で生きる自分自身の役割について、次のようにつづっています。

「僕は『音楽で世界は変えられない』と思っている。無理だ。音楽にそんな力はない。他の業界に比べて音楽業界は夢見がちな人が多い気がする。スタッフには元ミュージシャンとか表舞台に名残がある人も多いから、社会性のない人も多い。そんな人に限って言うのである。『君ら日本を変えられるよ』とかなんとか。

そんなもんはざれ事である。

国を変えるのはいつでも政治だし、政治を変えるのはいつでも金の力だ。そこに音楽は介入できない。

でも、音楽でたった1人の人間は変えられるかもしれないと思う。たった1人の人間の心を支えられるかもしれないと思う。音楽は真ん中に立つ主役ではなく、人間に、人生に添えるものであると思う」

自分中心としながらも、このように社会性を持ち合わせているところが、星野さんのバランス感覚の良さとマルチなセンスにつながり、星野さんならではの役割を全うする力が発揮されているのだと思います。

とはいえ、誰もが星野さんのようにマルチな才能を持つわけではなく、先が見えにくい世の中で、自分自身の役割を見極めることは、とても難しいと思います。先行きが不透明ななかで、私たちはどのように進んでいったらよいのか……。その答えを簡単に導き出すことはできません。

今の自分があるのは以前の自分のおかげ

ですが、平熱であり続ける星野さんを見ていると、せめて心持ちだけでも萎えることなく、平常、平熱でありたいと意識し続けることが大切であるように感じます。

「焦らない。今の自分がいるのは以前の自分のおかげである。明日の自分がいるのは今の自分のおかげになる」そう意識しながら進み続けた先に、いつか「困難を乗り越えた自分、脱皮できている自分」に出会えるはず、そう信じて、今は来るべき時に向けて、静かに備える時期なのかもしれません。

星野さんの仕事と向き合う姿勢や著書の文面からは、焦らずに日々を進んでいくことの意味と平熱であり続ける力の大切さをくみ取ることができます。

そして同時に、「今も仕事が始まると夢中になる」という星野さんが演じる「機捜」の刑事が挑むハードなカーレースやアクションからも、前向きなアクティブパワーをもらいつつ、一歩一歩進んでいくことができれば……と思います。

鈴木ともみ
 経済キャスター。国士館大学政経学部兼任講師、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。テレビ、ラジオ、各種シンポジウムへの出演のほか、雑誌やWeb(ニュースサイト)にてコラムを連載。株式市況番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重TV・ストックボイス)キャスターとしても活動中。近著に「資産寿命を延ばす逆算力」(シャスタインターナショナル)がある。

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