必要以上に入っていない? 生命保険4つのポイント
新型コロナウイルスで収入が減った、あるいは減りそう、という場合や、ムダな出費をなくして貯蓄額を増やしたいというときは、支出の見直しが欠かせません。中でも見直し効果が高いのは固定費で、その一つが生命保険料です。でも「保険のことがよくわからない」という人も多いでしょう。そこで今回は、生命保険をどのように考えたらよいか、4つのポイントをご紹介します。
生命保険はいろいろな種類があり、自分にとって何がどのくらい必要なのかがわかりにくいですよね。でも、わからないからといって人任せにすると、必要以上の保険に入ってしまい、必要以上の保険料を払うことになるかもしれません。
やはり自分で考えて、自分で判断することが大切です。そのためにまず、生命保険を選んだり保障額を決めたりするのに必要な考え方を押さえておきましょう。
ポイント1:生命保険は「保障を買う」もの
生命保険には「加入する」とか「入る」などといいますが、それは保険会社と保険契約を結ぶことを意味します。保険契約は、加入する人が保険料を払い、保険会社は契約で決めた事柄(亡くなる、入院するなど)が起こったとき保険金・給付金を支払って経済的な保障をする、という内容です。
生命保険は金融商品の一つで、生命保険に加入するということは、お金を払って保障を得る、つまり「保障を買う」ことなのです。
生命保険は一度契約すると、途中で見直さない限り長期にわたって保険料を支払い続けることになります。例えば、毎月の保険料が2万円だとすると、年間で24万円。それが30年だと720万円にもなります。生命保険は、実はとても高額な買い物といえます。
ですから、保険会社の営業職員や保険ショップの窓口で熱心に勧められたものに加入するというのはNG。服でもスマホでも、買うときは自分に合うかどうか、価格が妥当かどうか、いろいろ比較検討しますよね。それと同じように、保険も自分にとっての必要性や保険料がムリなく払えるかどうかをチェックし、比較したうえで契約することが重要です。
ポイント2:生命保険は公的な保障を補うもの
「もし夫が亡くなったら私と子どもが路頭に迷ってしまう」とか「もし病気になって長期に入院したら医療費がかさむかも」など、人それぞれにいろいろな不安があるでしょう。そうした経済的に困ることが起こったとき、まず頼りにすべきは公的な保障です。
子どもがいる人が亡くなると、遺族は子どもが高校を卒業するまで国から遺族基礎年金が受け取れるし、亡くなった人が会社員なら遺族厚生年金も受け取れます。病気やケガで治療を受けたり入院したりした場合、かかった医療費の7割は公的健康保険から支払われるので、自己負担する額は3割ですみます。さらに、1カ月の自己負担額には上限があるため、どんなに医療費がかさんでも経済的負担が一定以上になることはありません。
こうした公的な保障があることを知ったうえで、それでも不足するようであれば生命保険で補うというのが正しい手順です。そうすれば、必要以上の保険に入ったり、必要以上の保険料を払ったりすることはなくなります。
ポイント3:保障と保険料のバランスが大切
生命保険は保障額が高いほど、万一のときに受け取れる金額が多くなりますが、そのぶん、保険料が高くなります。また保険は、基本となる"主契約"に、オプションとしてさまざまな"特約"をつけて保障範囲を広げることができますが、特約が多いと保険料は高くなります。
保障が手厚いほど安心だとばかりに、必要以上に保障額を高くしたり特約をたくさんつけていたりすると、保険料が高くなって家計を圧迫します。かといって、保障が不足していると、万一のとき、経済的に困ることになります。
大切なのは保障と保険料のバランス。必要な保障を必要なだけ確保するようにすれば、ムダな保険料を払わずにすみます。
すでに加入している保険の保障が多すぎるなら、それを必要額まで減らす見直しをすると、保険料を下げられることがあります。
ポイント4:保障と貯蓄は別に考える
生命保険には掛け捨て型(定期保険など)と貯蓄型(終身保険、個人年金保険など)があります。掛け捨て型は払った保険料が保障のみに使われます。それに対して貯蓄型は、支払った保険料の一部が積み立てられて、満期あるいは解約したときにまとまった金額が受け取れます。お金が戻ってこない掛け捨て型は損だと感じる人もいるようですが、実はリーズナブルな商品です。
保障額が同じなら、貯蓄型は積み立て部分がある分、掛け捨て型より保険料が高くなります。満期や解約のときに受け取れるお金は、もともと自分が払った保険料なのです。積み立てられた保険料は保険会社が運用し、それによって増えることがあります。実際に、金利の高かった時代は積み立て部分が大きく増えて、保険で貯蓄することができました。でも、現在のように低金利が長く続いている状況だと、保険会社も十分な運用ができず、保険でお金を増やすことは難しくなっています。
学資保険は貯蓄を目的として作られている保険商品ですが、保険料の一部が保障に回るぶん運用効率が下がり、中には支払う保険料の総額より受け取る満期金などのほうが少ないという、"元本割れ"を起こすものもあります。
保険で貯蓄もできたのは昔の話。今は、保障は掛け捨て型の保険を使い、貯蓄は保険以外の金融商品を使う、というふうに分けて考えましょう。
4つのポイントを見ると、これまで思っていた生命保険のイメージとはかなり違っていると感じるかもしれませんね。でも、これがわかっていれば自分に合った保険が選べるようになります。次回は保険の種類ごとの加入の仕方・見直し方など具体的な方法をご紹介します。
オフィス・カノン代表。ファイナンシャルプランナー(CFP)、1級ファイナンシャルプランニング技能士。千葉大卒。法律雑誌編集部勤務、フリー編集者を経て、ファイナンシャルプランナーとして記事執筆、講演などを手掛けてきた。著書に「だれでもカンタンにできる資産運用のはじめ方」(ナツメ社)など。http://www.m-magai.net
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