2020/7/25

ワクチン接種への理解を得ることも重要

コロナワクチンがWHOの基準を満たし、「ワクチンの恩恵がリスクを上回った」としても、どれだけの人が納得してワクチンを接種するかはわからない。

5月に、AP通信・公共問題調査センター(NORC)が米国で1000人以上を対象に行った調査では、約50%の回答者が、コロナワクチンが接種できるようになったら自分も受けるつもりだと答えた。同センターが過去にインフルエンザワクチンについて調査した際にもほぼ同じ回答が得られ、ピュー研究センターが同じく5月に行った調査でも同様だった。

だが、インフルエンザよりもコロナワクチンの方が、躊躇する人は多い。インフルエンザワクチンを接種するかどうか決めていないと答えた人は18%だったのに対して、コロナワクチンについて態度を決めかねている人は31%に上った。そのなかでも、コロナワクチンの副反応を心配する人の数は、インフルエンザワクチンの副反応を心配する人の数の2倍に及んでいた。

さらに、女性の方がコロナワクチンに懐疑的であるという興味深い結果も出た。コロナワクチンを接種すると答えた男性は56%だったのに対し、女性は43%にとどまった。「多くの家庭で、医療に関する決定権を持つのは女性です。家族全員のワクチン接種や医療の決定権を持ち、医者へ予約を入れる女性は、潜在的影響力を持つグループです」と、AP通信・NORC副所長のジェニファー・ベンズ氏は言う。

今後主に問題となってくるのは、有効なワクチンが受けられるようになったときに、自分が接種することでパンデミックの終焉を助けるのだということを人々にどう説明するかだと、ローレンス氏は言う。「ワクチンがどのように試験されたか、その安全性や役割、そしてそれがいかに感染症の拡大を防ぐのかといったことを広く知ってもらうために、私たちはあらゆる手を尽くさなければなりません」

ワクチンへの不信感以外にも、懸念材料はある。ウェラー氏は、少なくとも最初のうちは需要が供給を大きく上回ることを想定している。

米メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターのアメシュ・アダルジャ氏も、一般への接種開始は慎重に計画しなければ、接種希望者が殺到して混乱が起こるのではないかという。「デパートで年に一度の大セールが開催された場合を想像してみてください」

過去に別の病気の集団予防接種運動に関わった人々は、コロナワクチンの開発過程を注意深く見守っている。ワクチンの信頼性とともに、受けたい人が受けられるようにすることが重要だ。サッター氏は警告する。「一般への接種開始は慎重にやらなければなりません。少しでも問題が起きれば、ワクチンへの信頼はあっという間に失なわれてしまいます」

(文 ROXANNE KHAMSI、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年7月4日付]

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