ゲスの極み乙女。「今はやりたいことを自由にできる」

日経エンタテインメント!

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川谷絵音率いる男女混成バンド、ゲスの極み乙女。が、メジャー5枚目のフルアルバム『ストリーミング、CD、レコード』を完成させた。リリース形態をそのままアルバムタイトルにした理由や、バンドサウンドの進化、ストリーミング時代の音楽制作で心がけていることなどを川谷にインタビューした。

川谷絵音(ボーカル&ギター)、休日課長(ベース)、ちゃんMARI(キーボード)、ほな・いこか(ドラム)の4人組ロックバンド。2014年にメジャーデビュー。全曲の作詞・作曲を川谷が手掛けており、プログレ、ヒップホップなども取り込んだ中毒性の高いサウンドが特徴

およそアルバムタイトルらしくない表題に意表を突かれるが、リリース形態にも驚かされる。まずストリーミングで5月1日に全音源を解禁し、6月17日にCDにDVD(もしくはBlu-ray)が付いたDeluxe Editionと、アナログ盤を発売。CD単体の発売はなく、なんとその代わりに、patisserie KIHACHIの特製バームクーヘンと歌詞カードをセットにした“賞味期限付きアルバム”も同時に売り出した。奇抜な発想と遊び心が満載のものとなっている。まずは、それらの意図について川谷に聞いた。

「初めは普通にアルバムを出すつもりでしたが、これまでレコードを出したことがないので今回は出したいね、という話になって。それで、リリース形態をそのままタイトルにしました(笑)。

ストリーミングで先に全曲を解禁したのは、僕らの音楽を聴いてくれてる人はCDよりもストリーミングで聴いてくれる人のほうが多いからですね。それに『もうみんなCDは聴いていないかもしれない』という思いもずっとあって…。そんな時に話し合いの中からちょうど『CD以外で楽しんでもらえる別の形を提案してみてはどうか?』というアイデアが生まれ、(レコードやCDと形が似ている)バームクーヘンに行き着きました。ちゃんとバームクーヘンはいろいろ試食もしましたよ(笑)」

これまで、耳に残る旋律や艶やかでち密に構築されたバンドサウンド、言葉遊びにトゲを潜ませた歌詞など、独自の美学が宿る音楽でファンを魅了してきた彼ら。

本作は、彼らの代表曲『私以外私じゃないの』や『キラーボール』をもとに、新たに作った『私以外も私』や『キラーボールをもう一度』を収録。過去との対比によって、バンドの成長をより鮮明に感じられる。また、彼らの持ち味である男女ボーカルによる掛け合いにも、さらに磨きがかかったようだ。

「『私以外私じゃないの』と『キラーボール』はストリーミングでの再生数も多いのですが、特に『キラーボール』は昔に録った曲なので音に納得がいっていなくて、もっといい音で聴いてほしいという思いがずっとあったんです。ボーカルや音質をバージョンアップしたいけど、ただ録り直すのは粋じゃない。それならいっそのこと作り直そうと(笑)。

今回のアルバムに収録する曲は、打ち込み中心だったり、バンドサウンドに縛られない楽曲が多いんですが、それは近年、メンバーが忙しくて、なかなか全員で集まれなかったのも一因なんです。(ドラムの)ほな・いこかが女優業に進出したり、(ベース担当の休日)課長はもう1つのバンドのDADARAYだったり俳優活動もあった。(キーボードの)ちゃんMARIはソロや、TK(from 凛として時雨)さんなど、他のアーティストのサポートもあったし。今年の1月初めにようやく全員でレコーディングして、これだけ良いものが作れたなら、もっとみんなで集まる時間があれば、さらにいいものを作れたはず…という思いもあったりします。

制作では、ちゃんMARIと2人だけでデモの制作を進めたものもありました。彼女は、歌でも貢献してくれていて。『問いかけはいつもためらうためにある』では、2人で掛け合いのラップに挑んでいます。ゲスに関しては、歌も楽器の1部のような捉え方なので、男女で歌ったほうがサウンドのバリエーションが増えるんです」

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音数を厳選し、海外も視野に