本書では、ICT(情報通信技術)による産業集積(福島県会津若松市)、食文化やサイエンスを軸とした地域デザイン(山形県鶴岡市)、アートから続く地域振興(徳島県神山町)、複合拠点による賑わいづくりを通じた移住・定住促進(岩手県遠野市)、データ活用による観光振興(宮城県気仙沼市)、移住高齢者らが自立して暮らす拠点「CCRC」を活用した地域活性化(石川県金沢市)などを紹介しているほか、一つの都市で努力するだけでなく、都市間で連携して地方創生に取り組む事例なども紹介している。

会津若松市の事例で、核となっているのは、ICTに特化した会津大学である。こうした地元特有のリソースを活用するのは、地方創生の最も有力な方法だが、それ以外の事例では、特徴がそれほどないと思われている場所で「強み」を発見し、生かしていくことに取り組んでいる。そのポイントは次の通りだという。

これらには、成功の要と言える共通点がある。データ分析を取り入れながら、地域資源を活用した独自価値を見いだし前面に打ち出す。外部の資金や投資を呼び込む。多様な人を巻き込む。そして、始めたからには粘り強く、時には柔軟に進化させながら継続的に取り組む。この成功パターンをぜひ参考にしてほしい。もちろん、差別化領域における内在価値を発掘する際には、自己満足ではいけない。各地域、各人が内在価値だと思うものであっても、他地域との比較によって「競争優位性」が見いだせなければ、成功する可能性は低いからだ。
(第7章「各都市の価値をどうやって向上させるか」p183)

GDP(カネ・モノ)からQoL(生活の質)へ価値観がシフト

2030年頃の都市と地方はどうなっているだろうか。

感染症のリスクが低いだけでなく、地方は犯罪も少ない。生活コスト(特に住宅関連)は東京の約半分で、自然環境が豊か、さらに、デジタルの力をフル活用して、仕事も医療も教育もエンターテインメントもそろっているとなれば、これまで以上に「地方」が注目を集めるだろう。

さらに、人口減少、高齢社会、低成長の日本で、人々の価値観はGDP(お金やモノ)からQoL(生活の質、精神的充実)へシフトしつつある。それにマッチした生活スタイルはどんなものかと考えたとき、窮屈な都心より、豊かな地方での生活が、非常に有力な選択肢として浮上してくることになる、と著者たちは考えている。

(日経BP 沖本健二)

デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路

著者 : 江川 昌史, 藤井 篤之
出版 : 日経BP
価格 : 1,760円 (税込み)

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