シミュレーションでは、「食費」「住居費」「医療・介護」「娯楽」など、9つの支出項目別に試算している。この中から、「食費」と「住居費」をピックアップして見てみよう。

(1)食費
コミュニティ構築がしやすく土地の価格が安い地方部においては将来、デジタル化の進展により自動化・工業化が進んだ農業が普及する可能性が高く、専門の農業法人や農家ではなく一般の人でもコミュニティで集まって、ある程度の農業生産を行うことが容易になる。さらには、テレワーク・在宅勤務を前提としたフリーランスが増え、職場の飲み会やランチでの外食機会が減少。デジタル技術によるマッチング率の向上や保存技術の向上により、コミュニティでの食材の一括購入や、調理のシェアリングを通じた調達コスト低減、さらには地域コミュニティ間における余った食材のシェアリングなどにより、地方においては食費がかなり低減する。つまり、自給自足とまではいかなくても、地域コミュニティ間自足のような状況が増加すると想定される。
試算の結果、都市部は食費が17%増加するが、農業にかかる初期投資分などを加味しても現在ですら都市部より32%安い地方が2050年頃にはさらに17%安くなる。その差は52%に広がると予測される。
              
(2) 住居費
住宅は地価の差の影響を最も受けるため、住居費は現時点においても都市部と地方部の差が大きい支出項目だ。都心は地価上昇が続いており、今後も一定の上昇が続くと仮定すると、都市部の住居費の低減は難しい。
一方、地方においては空き家が大量にあることが課題になっている。地方自治体によっては空き家を紹介するマッチングサイトを運営しているところもあるが、条件を問わなければ無料に近い格安価格で移住者に紹介されている。空き家をリフォームし、安く提供するサービスが普及すれば、ただでさえ安い地方の住居費が、さらに安くなると考えられる。補助金利用も想定し、空き家の購入とリフォームで総額1000万を切る価格が実現できれば、住宅ローンの利用を考えても現在の平均よりも住居費は28%安くなる。これは、地方部で持ち家を持ったとしても都市部よりも63%安い価格で住める計算だ。
(「第4章 地方創生を後押しする最新テクノロジー」p139-141)

データ活用で「競争優位性」を見いだす

もちろん生活コストが安いという理由だけで、地方移住者が増えるほど、今の状況は甘くない。各地方が、自らの強みや価値を明確にする「差別化戦略」や「競争優位性」を持ち、自らの地域の強みは何かを見つめ直し、それを生かす形で住民誘致や観光客誘致に工夫を凝らす必要がある。

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