これから住まいを買おうと考えている人たちにとって、新型コロナウイルスの感染の状況などが価格にどう影響を与えるのか、気になるところでしょう。住宅ジャーナリストの榊淳司さんは「消費者がマンションの価格下落を実感できるのは、2021年以降ではないか」と予測します。
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最近、よく聞かれる質問があります。
「これからマンションの価格は下がりますか?」「下がるとすれば、いつですか?」。こういった質問に答えるのは難しいと感じています。
コロナによって不況が訪れることは間違いないと思います。20年4~6月期の国内総生産(GDP)はおそらく2桁のマイナスでしょう。史上最悪と言っていいリーマン・ショック後の09年1~3月期の年率換算(実質マイナス14.2%)を超える下落幅になりそうです。
ただ、足元では不動産の価格は下がっていません。なぜでしょうか?
過去のバブル、お金の供給が減って終息
筆者は1960年代生まれの昭和世代として、過去3回の不動産バブルと、2回のバブル崩壊を経験しました。今後、3回目のバブル崩壊に立ち会うことになるのでしょうか。
過去2回のバブル崩壊と今回との大きな違いは、金融情勢です。90年代には平成バブルの崩壊がありました。このとき、「平成の鬼平」とも呼ばれた日銀の三重野康総裁(当時)がバブル退治をします。利上げによる金融の引き締めです。
05年ごろからは国内外の不動産投資ファンドが土地や建物を買いあさり、そのことが周辺の地価を押し上げた「ファンドバブル」がありました。しかし、海外から流入していたファンドマネーはリーマン・ショックで一斉に逃避。そのことでバブルは崩壊しました。平成バブルと同様、お金の供給が行き詰まることでバブルが終わったのです。
しかし、今回の不動産価格の高止まりは違います。
郊外のファミリー向け、販売不振に
米ドルやユーロ、円といった世界の主要通貨は、史上類を見ない金融緩和で軒並み大量に市場に供給されています。お金がジャブジャブと市場に送り出されているのです。
日本では無利子・無担保での融資制度などが設けられていることもあり、中小・零細企業の経営者の一部がこうした制度の融資枠から目いっぱいのお金を引き出し、ビルやマンションの購入に走っているのです。これこそ、ちょっとしたバブル現象といえます。