緊急事態宣言は解除されたが、2カ月にわたった自粛期間で私たちの生活、特に食シーンは激変した。オンライン飲み会や自炊に目覚めるなど、新しい発見があったという人は多いだろう。そんな中、ネットで食べるものを購入する「オンライン宅配」を始める人が急増。コロナ禍以前から野菜の宅配やネットスーパーはあったが、定期的に使うのは特に忙しい人やオーガニックに強いこだわりがある人など限定的だった。
しかし家でパソコンに向かう時間が増えたこと、また連日大混雑だったスーパーでの買い物を避けるためにも、利用する人が続出した。今回は従来のオンライン宅配になかったユニークなサービスを提供し、一気に会員数を伸ばしている2つの人気オンラインショップを紹介する。

1店目は「日本初の“提案型”野菜宅配サービス」がコンセプトのココノミ(神戸市)が展開するオンラインショップだ。無農薬の野菜をメインに、牛乳や豆腐などの加工食品も販売する。野菜の宅配はすでに多くの企業がやっており、希少性はない。私は数年前、食のライターとして5社の野菜宅配を頼んで比較してみたことがあるが、特に感動もなく、近所のスーパーの野菜と大きな差異も感じなかったのですぐやめてしまった。しかしココノミがうたう「『提案型』とはなんだろう?」とふと興味を持った。
ココノミは初回に限り、野菜や加工食品12品の詰め合わせ(1980円、税別・送料無料)が注文できる。これはココノミ側が詰めたパックではなく、「さっぱりと食べやすいジューシーな小松菜」「新鮮で厚み満点 甘味があり口当たりまろやかなニラ」「シャキシャキ食感で旨味十分の玉ねぎ」など味や食感をわかりやすく書いた25種類の食材から、購入者が好みのものを選ぶシステムだ。
そして届いたのが記事冒頭の写真のセットだ。見た目は過去に試した野菜宅配と大差ないが、手に取って驚いた。どれも香りが際立っており、プチトマトは「夏の匂いがする」とはこのことか、と思うほど濃厚。レモンは逆に酸味がとがりすぎず、ふわっと甘い香りが漂う。いつも買う安価な輸入レモンと全く違う。
きわめつけはタマネギだ。「吉本さんの玉ねぎ(高知県産)」は、皮をむくと生のタマネギから煮込んだポタージュのような香りが立ち上り、「なんだこれは!」と仰天した。包丁を入れても良い香りは続き、薄切りをつまむとダイコンやリンゴのような優しい味がした(しかしタマネギ本来の辛さはある)。この体験は強烈で、袋にあった生産者の吉本さんの連絡先に、思わずメッセージを送ってしまったほどだ。