年金改革法で会社員もiDeCo拡充 繰り下げ受給も利点いまさら聞けない大人のマネーレッスン

2020/6/29

繰り上げ受給の損益分岐年齢は?

繰り上げ受給では、受給開始を前倒しできる年齢は60歳までと変更ありませんが、22年4月以降は、1カ月あたりの減額率が0.5%から0.4%に縮小されます。60歳まで繰り上げた場合の減額率は、現在の30%から24%になります。

「早く受け取れて、減額率も縮小されるのであれば、繰り上げ受給が良いのでは?」と思う人もいるかもしれません。が、注意していただきたいことは、減額された年金は一生減額されたままだということ。年金の総受取額で考えると、65歳で受給を開始した人よりも少なくなる可能性があるのです。

上の図の通り、60歳まで繰り上げると76歳8カ月時点(改正後の22年4月以降は80歳10カ月時点)で、65歳開始での受給合計額と同じになります。それ以降は、長生きするほど金額の差は開いていきます。

また、繰り上げのデメリットは減額だけではありません。障害基礎年金や遺族年金、寡婦年金など、他の年金の支給が制限される可能性があります。

たとえば、障害基礎年金は、65歳以前に初診日がある傷病で障害を負った人が対象です。繰り上げ受給をすると、受給上の年齢が65歳とカウントされるため、その後で障害を負ったり、状態が悪化したりしても障害基礎年金は請求できません。

日本経済新聞の6月6日付の記事「コロナ禍で相談増加 年金繰り上げ、選択は慎重に」によると、収入が減り、繰り上げ受給を考えるシニアが増えているとのこと。事情が許す限り、繰り上げ受給は慎重に行いたいところです。どうしても早く年金を受け取りたい場合は、夫婦であれば、どちらか1人だけを繰り上げてもいいかもしれません。

繰り下げ受給は75歳まで可能に

一方の繰り下げ受給ですが、22年4月以降、受け取り開始の年齢が70歳から75歳まで延長されます。1カ月繰り下げるごとに0.7%増額されるのは現行通りで、70歳まで繰り下げると42%の増額、75歳まで繰り下げると84%の増額となります。増えた年金額は一生涯続きます。

ただし、繰り下げ受給によって年金が増額されると、税・社会保険料の負担も増える可能性があるため、注意が必要です。

また、会社員として働いていた夫が厚生年金を繰り下げると、年金版の家族手当ともいえる「加給年金」(65歳未満の配偶者や18歳到達年度の末日までの間の子がいる場合に受け取れる加算)が受け取れなくなるケースもあります。事前に条件をチェックして下さい。

繰り下げは、長生きをしたときに生活が困らないように年金を増やしておく仕組みです。損益分岐点だけを気にするものではありません。いつまで働くかなどを含めて考えてみましょう。

繰り上げ・繰り下げ受給の手続きは、お近くの年金事務所で行いますが、その際、加給年金などについても相談すると良いでしょう。

iDeCoに加入できる会社員が増える

最後にiDeCoに関する改正を確認しておきましょう。

iDeCoは「国民年金」や「厚生年金」などの公的年金に上乗せする年金制度です。

現状、企業型確定拠出年金(DC)に加入している会社員は、ほとんどの人がiDeCoに加入できていません。厚生労働省の資料によると、企業型DCを導入している会社のうちiDeCoの加入を認めている企業は、19年3月末時点で全体の約4%でした(※)。

(※) 厚生労働省 第9回社会保障審議会企業年金・個人年金部会 資料

22年10月以降は、企業型DCのある会社員も、その規約にかかわらず、iDeCoに加入できるようになります。

年金制度の概要 (※1)企業年金(確定給付型)も確定拠出年金(企業型)もない場合(※2)企業年金(確定給付型)と企業型DCの両方に加入している場合(※3)確定給付型がなく企業型DCに加入する場合
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