そうした原点としての人間像を補助線に、社長としての11年を検証していくのが第2部「経営者」だ。時価総額で日本1位の会社のトップという外側だけからは簡単に導き出せない経営者としての姿勢や行動、理念をあぶり出していく。社長就任直後に起きた米国でのリコール事件や東日本大震災への対応、その後に進めたTPS(トヨタ生産方式)のさらなる磨き上げやアライアンスの見直し、自動運転や電動化、サービス化などCASEへの対応……。

意外なほど起業家的な経営者

読んでいて感じるのは、章男氏が大企業の社長にしては意外なほど起業家的な側面を持っていることだ。判断も硬直的ではなく、市井の人の感覚を大事にしながら理念や大義を大切にする。そんなリーダー像が浮かび上がってくる。章男氏は18年、「私はトヨタを、クルマ会社を超え、人々のさまざまな移動を助ける会社『モビリティカンパニー』へと変革することを決意しました」と打ち出した。その変革をどのように導いていくのか、がぜん興味がわいてくる。

「4月の発売からベスト20圏内で売れている」と同店でビジネス書を担当する川原敏治さんは話す。最近はトヨタイムズのテレビCMなどで本人の露出が多いこともあり、豊田章男氏へのビジネスパーソンの関心は高くなっているようだ。

コロナ後に高い関心

それでは先週のビジネス書ランキングを見ておこう。今回はベストテンを紹介する。

(1)SNSで売る!鈴木 宏佳著(合同フォレスト)
(2)ホリプロって何だ?堀威夫著(財界研究所)
(3)ハラスメント防止の基本と実務石嵜信憲ほか著(中央経済社)
(4)人生逃げ切り戦略やまもとりゅうけん著(KADOKAWA)
(5)アフターコロナ 見えてきた7つのメガトレンド日経クロステック編(日経BP)
(6)スマホ人生戦略堀江貴文著(学研プラス)
(7)大前研一 世界の潮流2020~21大前研一著(プレジデント社)
(8)コロナショック・サバイバル冨山和彦著(文芸春秋)
(9)危機の時代ジム・ロジャーズ著(日経BP)
(10)FACTFULNESSH・ロスリングほか著(日経BP)

(八重洲ブックセンター本店、2020年6月7~13日)

店頭の実売でトップだったのは、5位に入ったコロナ後を予測したムック。前回「コロナ後の世界 技術とビジネスを手掛かりに大胆展望」で紹介した本だ。堀江貴文氏の近刊を挟んで、コロナ後を展望した本が7~9位に続く。10位には、このところメディアなどで改めて取り上げられることの多いロングセラー『FACTFULNESS』が続く。今回紹介したノンフィクションは14位だった。

(水柿武志)

豊田章男

著者 : 片山 修
出版 : 東洋経済新報社
価格 : ¥1,650 (税込み)