
人類の伴侶となってもはや1万年以上、イヌはいろいろな面で人間に似ている。ヒトの表情を読むことができるし、ゲノムまでヒトに近い。そして新たな研究により、体に取り込む有毒な化学物質も同じであることが明らかになった。
2020年5月13日付の学術誌「Environmental Science and Technology」に発表されたこの研究成果は、ヒトの健康の改善に役立つ可能性がある。
食品包装から化粧品まで、有害物質は多くの日用品に含まれている。よく使われるのは、防虫や難燃のため、あるいはプラスチックを軟化するための化学物質。これらの物質に長期的・慢性的にさらされると(曝露)、複数種類のがんを含め、人間の病気の原因になると考えられている。
では、人間と同じ生活空間を共有している飼いイヌはどうなのだろうか? 研究チームは、化学物質が飼いイヌに与える影響について、初の調査を実施した。
ヒトと同じだけさらされている
化学物質への曝露を検出するために、シリコーン製のリストバンドをヒトに、シリコーン製のタグをイヌの首輪に装着してもらった。これは比較的新しい検出技術だ。回収して化学物質を抽出した結果、イヌと飼い主で、曝露レベルが驚くほど近いことがわかった。
この結果は朗報だと、研究を率いた米ノースカロライナ州立大学のキャサリン・ワイズ氏は言う。イヌが人間の健康に関する早期警報システムとして働く可能性を示したからだ。化学物質にさらされる影響について、貴重な手がかりが得られるかもしれない。
人間の場合、化学物質に関連する病気が現れるまでに数十年かかることも珍しくないが、ペットへの影響はわずか数年しかかからないこともあると氏は言う。そのため、例えばフタル酸エステル類が確実にイヌのがんにつながることがわかったなら、人間もそれを含んだプラスチックの使用にもっと慎重になることができる。
この研究は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が起きている今、特に意義深いと氏は付け加える。
「我々のほとんどが家に閉じこもり、イヌとともに過ごす時間がとても長くなっています。人間とイヌが共有する環境の重要性が、今ほど高まったことはないのです」