乃木坂46の齋藤・山下・梅澤 実写版『映像研』に挑む
アニメーション制作を志す女子高生3人の青春冒険譚を描いた人気コミック『映像研には手を出すな!』(以下、『映像研』)がドラマ、映画で実写化。同作は今年1月から3月までアニメ版が放送された。実写版は連続ドラマが4月から全6話で放送、9月25日公開の映画はドラマから話が続いている。
人見知りな主人公、浅草みどりには齋藤飛鳥、カリスマモデルでありながらアニメーター志望の水崎ツバメには山下美月、プロデューサー気質の金森さやかには梅澤美波が乃木坂46からキャスティングされた。
実写版の企画、プロデュースを担当したのは東宝の上野裕平氏。やはり乃木坂46のメンバーたちが出演した、なぎなたに青春をかける少女たちを描いたコミック『あさひなぐ』の実写映画化(2017年9月公開)も手掛けた。
乃木坂46のメンバーが出演することを軸に、「作り込まれた個性的なキャラクターを演じるチャレンジができるか」という観点で作品を探すことからスタート。たくさんのコミックを読みあさったという上野氏の目に留まったのが『映像研』だった。「メインキャラクターの3人がとにかくかわいく、魅力的。彼女たちを実写で動かしてみたいと思った」(上野氏、以下同)と言う。
映像化にあたっては「原作や乃木坂46のファンだけではなく、そのどちらも知らない人にも面白がってもらいたい」と考え、作品への間口を広げるために、まずはドラマ、そして映画へとストーリーがつながる形での制作が進行した。
キャストに関しては、「実写版『あさひなぐ』でメインキャストを務めた西野七瀬さんと白石麻衣さんは、もう次のステップに進んでいる。『あさひなぐ』の舞台版(17年5~6月)で主人公を熱演していた齋藤飛鳥さんを見て、これからの乃木坂46を背負う人という印象が強く残っていたので、まず齋藤さんありきで考えた。乃木坂46のミュージックビデオもたくさん見て、演技経験が豊富な若手として、山下美月さんと梅澤美波さんの起用を決めました」。
原作にないシーンも盛りだくさん
実写版ならではの見どころの1つは、メインキャスト3人が原作にはない一面を見せる点だ。主人公の浅草は、人見知りながらも仲間のために必死で大勢の人々の前でしゃべろうとする。「原作での浅草は対人能力ゼロ、一般常識でいうと"ギリギリの人"です。でも、映像作品ではしゃべらないと物語が進行しない。彼女なりにいかにしゃべろうとするか、という部分を相当膨らませました」。残る2人についても「水崎は浅草と金森の両方の理屈が理解できる橋渡し役。そこに、両親が俳優で"二世"ならではの素直で嫌味がない性格という彼女自身の要素が加わっています。金森は比較的原作からストレートですが、視覚的にもインパクトのある、たたく、蹴るというところを追加しています」と映像化ならではのアレンジのポイントを明かす。
撮影は、昨年秋頃にクランクイン。今年1月のクランクアップまで、現場での3人は常にストイックかつ、プロフェッショナルに徹していたという。「齋藤さんは英(勉)監督のオーダーに100%応えて、役柄の精度をどんどん高めていった。山下さんは自他共に認める"地に近い"役。突き抜けた役の齋藤さん、梅澤さんに対してそれぞれナチュラルに対応する機敏さを見せました。映画撮影はこれが初めてという梅澤さんは、現場に入る前に役を完璧に作り上げてきた。それゆえに、自分の演技に納得がいかなかった後には、『こんなの金森じゃない』と涙することもありました」
『映像研』ならではの、3人が妄想の世界を駆け巡るシーンの表現法に関しては、「実写でやりきることに意味がある」ということを優先。英勉監督のアイデアで、まず3人の妄想はあえてシンプルな線画のみで見せ、そこから出来上った世界をVFXでリアルに見せるという構成を選択した。
実写版『映像研』は原作のクセの強さを引き継ぎつつ、メインキャラクター3人を独自の空気感や魅力で表現したといえる。
原作は『月刊!スピリッツ』で連載中の大童澄瞳によるコミック。超人見知りだが天才監督の才能を持つ浅草みどり(齋藤飛鳥)、カリスマ読者モデルでアニメーターの水崎ツバメ(山下美月)、金儲けが好きなプロデューサー金森さやか(梅澤美波)の3人が出会い、浅草が思い描く「最強の世界」をアニメで表現するために"映像研"を立ち上げる。ドラマは4月から全6話を放映(MBS/TBS系)。映画は9月25日公開(東宝映像事業部配給)
(ライター 西廣智一、日経エンタテインメント! 伊藤哲郎)
[日経エンタテインメント! 2020年6月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。