――新型コロナの感染拡大は女性の働き方にどのような影響を及ぼすのか?

「テレワークが広がったのは女性活躍の追い風になる。出勤しなくても家庭で仕事ができると多くの人が実感した。今後はいつどこで働いていようと、仕事のアウトプットで社員を評価する企業文化に変わっていくだろう。女性は家事・育児など家庭責任を現状負っている。残業ができる男性と比べ不利に扱われてきた。その状況に風穴があく」

「日本では男性がつくった組織形態に女性を無理やりはめ込もうとしていた。具体的には組織への忠誠を問うメンバーシップ型組織だ。今後は社員一人ひとりの役割を明確にしたジョブ型に変わっていかなくてはいけない。ジョブ型組織なら性別にかかわらず、年齢や国籍を問わずに多様な人材が活躍できる。資生堂は今回のコロナ禍をきっかけにジョブ型組織に刷新する考えだ」

3回目の失敗をしないよう

企業の女性活躍は景気変動に振り回されてきた。

1985年に男女雇用機会均等法が成立し、企業は男女の待遇格差が封じられた。法制度による“お仕着せ”ではあったが、女性の戦力化に企業は知恵を絞った。ただ、それもバブル崩壊まで。バブル景気に沸き、人手不足が顕著な時期に女性活躍に熱心だった企業も、不況に陥ると相次ぎ手を引いた。仕事と家庭の両立支援まで思いは至らず、女性社員は定着しなかった。

2000年代半ばには、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)ブームが席巻した。優秀な女性人材の採用・定着を狙い、同業他社と子育て支援策を競い合った。だが08年にリーマン・ショックが起きると、ブームの熱気は瞬時に霧散した。

女性活躍に限らず、人事施策は投資効果が短期的に表れない。業績が悪化したとき、人事施策は真っ先に切られがちだ。そして足元のコロナ不況。過去2回の思い出がよみがえる。従業員の雇用維持さえ危ぶまれる未曽有の事態。女性活躍の優先順位が下がるのも仕方ないという見方もある。

働く女性は増えた。ただ、増加分の多くはパートや派遣で働く非正規社員。経営の中枢を担う正社員は30年以上、ほぼ横ばいだ。経済協力開発機構の調査(16年)では日本の大卒女性の就業率は74%で対象の35カ国中29位と、高い教育を受けた人材が活躍できていない。女性活躍は採用から育成、活躍まで一貫した人事施策を持続して初めて効果が生まれる。景気変動に左右され中途半端に投げだし、一過性ブームで終わらせた過去2回のツケが精算できていない。

人権尊重の立場から男女差別は許されない。だが、女性活躍が重要な理由は女性の力が経営を強くするからだ。「コロナ禍から回復するために女性活躍を進めなくてはいけない」。3回目の失敗をしないよう、魚谷雅彦・CEOの言葉を肝に銘じたい。

(編集委員 石塚由紀夫)