現金を生み出したか リモートワークが示す仕事の価値20代から考える出世戦略(85)

生み出す価値から視線をそらすことはもうできない

話を架空の篠原さんに戻しましょう。

リモートワークになるまでは充実した働き方をしていた篠原さんですが、リモートワークになったとたん、やるべき仕事が一気に減ります。そして自由な時間が増えるのですが、そのことに不安を感じてしまっています。

その不安の理由を、実は篠原さんも気づいています。おそらく皆さんも想像がついていることでしょう。人間が漠然とした不安を感じるとき、実は理由がわかっていることが多いのです。

けれどもそのことを認めてしまうと、いろいろなものに支障がでてくるので、あえて考えないようになっています。

篠原さんが不安を感じる理由は、自分がいなくても会社が回るという事実です。

忙しく真剣に出席していた会議でも、よく考えてみれば、与えられていた役割は「ひな壇芸人」です。たまにいいことを言って盛り上げてくれることを期待するけれど、必ず必要な役割でもなく、代わりが効く存在なのです。

紙と印鑑を使った非効率な業務に救われていた部分もありました。けれどもメールの返信が電子承認の代わりに使われ、手書きではなくテキストデータで問題ないとなってしまえば効率は向上します。その分、時間が余るようになります。

コミュニケーションについても、読めばわかること、についてのやり取りがなくなれば課題に対して打ち手を示す必要が出てきます。しかし毎日斬新な打ち手が出るわけでもなければ、コミュニケーション頻度を下げても問題ないでしょう。

余った時間をいざ企画的な業務に使おうとしても、ほとんどやったことがなければ何から始めればよいかもわかりません。

気が付けば、ほとんど価値を生んでいない自分に気づいてしまうのです。

バリュードリブンな働き方があたりまえになる

会社、すなわちビジネスにおける価値とはなんでしょう。COVID-19の災禍は、私たちにシンプルなビジネスの価値を改めて示してくれました。

それは現金です。

多くの飲食店や小売業などが悲鳴をあげたのは、現金収入の消失でした。けれども家賃や従業員給与などの固定費は支払わなければいけない。現金が入ってこないのに、現金を支払わなければいけない。それに対して政府が対応したのも、シンプルな現金給付でした。

サントリーが支援している「さきめし」というサービスがありますが、これは飲食店を支援するために、さきにお金を支払い、コロナが収束した後に食事に行くという仕掛けです。つまり飲食店を助けるには、最初に現金が必要なのです。決して拍手や応援の言葉ではありません。

多くの会社では組織としての役割分担がされているので、単純に全社員が現金を生みだす活動に専念はできないでしょう。けれども「今すぐ現金を生む活動」「少し先に現金を生む活動」「将来現金を生む活動」という視点で見てみれば、全員が何らかの形で現金を生むための活動をしていることがわかります。そのための役割を与えられている「はず」なのです。

現金を生むためには、お客さんが喜んでお金を支払ってくれることが必要です。そのためにニーズを追求し、商品やサービスを提供し、満足度を高めてゆきます。そのために、従業員の働きやすさを整備し、満足度を高めてゆきます。お客様を価値の起点として、成果としての現金を手に入れる。それが企業のあたりまえです。

しかしリモートワークをはじめとする働き方の変化の中で、価値を生み出す仕事とそうでない仕事とが浮き彫りになりつつあります。個人に絞って考えてみると、貢献度に大きな開きがあることはより一層明確になります。

自分は毎日、毎週、毎月、毎年、いくらの現金を生んでいるのか。

そんな観点で働き方を見直すタイミングが来ています。

平康慶浩
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。高度人材養成機構理事リーダーシップ開発センター長。

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