「軽やかに変える」コロナに挑む300年老舗ベンチャー

中川政七商店は300年にわたり数々の危機を乗り越えてきた(渋谷店)
中川政七商店は300年にわたり数々の危機を乗り越えてきた(渋谷店)

1716年創業の老舗工芸品店、中川政七商店(奈良市)。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、全国の伝統工芸メーカーと手を組み、日本の素材や技術、風習を生かした衣類・生活雑貨の企画開発・製造から販売を手掛ける。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全国50店以上の直営店舗は一時休業に追い込まれた。現会長の13代中川政七さんはかつて、老舗の事業構造改革を推進、売り上げを一気に拡大した。その後を継いだ社長の千石あやさんはこの危機にどう立ち向かうのか。

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「相当の減収になります。直営店舗は59店ありますが、順次休業とし、4月下旬から全て閉めました(6月3日以降、直営店舗は再開)。顧客、そして従業員を守ることが今は第一優先です」。千石さんはこう話す。中川政七商店は現在の会長が13代目で、千石さんは2018年に創業家出身以外で初の社長に選ばれた。それだけにプレッシャーは半端ではなかったが、3年目の試練となった。

中川政七商店は江戸時代に「奈良晒(さらし)」と呼ばれた高級麻織物の問屋として誕生した。武士などに好まれ、幕府に献上したこともある。明治時代に皇室御用達となり、1925年のパリ万国博覧会に出展するなど高い評価を受けた。一方で、麻織物の需要低迷やつくり手の減少に苦悩。「11代目のときには廃業の危機に直面したこともある」という。その度ごとに様々な改革を断行した。

会社の姿が大きく変わるのは2008年に社長に就任した13代目中川政七さんの時代から。企業ビジョンを打ち出し、「SPA」といわれる製造小売業に転換、全国に直営店舗を展開。わずか就任8年で売り上げは10倍以上に拡大した。全国の伝統工芸メーカー約800社と一緒になって、年間2000点以上の商品を開発、製造販売している。東京都心部でも「東京ミッドタウン」や「コレド室町」、「G1NZA SIX(ギンザシックス)」など話題の複合商業施設に次々出店、ブランド力を高めた。そして20年秋には、本拠地の奈良市に街づくりの一環として奈良本店の入る複合商業施設が誕生予定、さらなる飛躍を狙っていたところだ。

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