新品より高い中古品なぜ 国際物流、コロナが揺さぶる

原油価格が下がっている一方、国際間の貨物運賃は上がっています。コロナウイルス感染拡大の影響で世界中、いたるところで物流が停滞しているからです。航空貨物の価格指標となるTACインデックスをみると上海発の欧米行き運賃はコロナ感染拡大前の4倍以上に跳ね上がっています。

理由は物流運賃が決まる仕組みにあります。物流の運賃は燃料代+人件費+スペース使用料金がベースです。さらにスペースの需給状況によって増減があります。現在は国際物流が滞り、運びたい荷物の量に対して貨物室のスペースが少ないため運賃が大幅に上昇しています。

まずは空運です。航空機による貨物の輸送は2種類あります。まず貨物専用機、もうひとつが旅客便への積み込みです。発着便数は圧倒的に旅客便のほうが多いのですが、全体の荷物総量で比較すると貨物専用機と旅客便はほぼ同じです。現在、貨物専用機はフル稼働に近い状態で飛んでいますが、もう半分の旅客便が減便や運休のため、全体的に貨物を運ぶスペースが縮小しているのです。

航空貨物、輸送能力3割減

4月下旬時点で航空貨物の輸送能力は前年同期比で3割落ち込みました。輸送能力が限られる一方で、医療物資の輸送需要が高まり、運びきれない貨物が発生。国際郵便などが各地で滞留しています。私は3月初めに中国のネット通販で「非接触式の体温計」を注文しましたが、この影響からか、まだ届いていません。経済活動が回復し始めると、輸送スペースの奪い合いはさらに激しくなりそうです。

海運も同じような状況です。コンテナ船は入港制限や船員不足で輸送能力が3割減るとの試算があります。コロナの感染防止のため自国への船員上陸を拒む例が出ているからです。海運大手の調査では、世界約120カ国のうち、自国港での船員交代を認めているのは日本や米国など37カ国・地域にとどまります。船員は最短3カ月で交代するのが一般的ですが、コロナ問題以降、ベトナムやインドなどの港湾で人を降ろせなくなりました。船員を交代できなければ労使協定上、船を動かせません。

企業業績にも影響

企業の業績や部品のサプライチェーン(供給網)に影響を及ぼしています。商船三井は2021年3月期(今期)の連結経常損益が100億円~400億円の赤字(前期は550億円の黒字)になりそうだと発表しました。株価市場もそれに反応しています。

自動車部品でも中国から日本向けの部品輸送を空輸に切り替えたところがでていますが、空輸も思うように輸送枠がとれず、完成車の生産に遅れが生じるリスクが高まっています。

ゲームにも影響が。巣ごもり消費で大人気となったゲームソフト「集まれ どうぶつの森」。発売本数が260万本を突破しました。ただ、ゲーム機「ニンテンドースイッチ」が物流停滞で供給不安を抱えています。中国で生産しているが航空便減少で部品がなかなかそろわないのです。21年3月期のスイッチ販売目標は前期比1割減の1900万台にとどまる見通しです。ニンテンドースイッチは店頭で品薄が続いています。早く入手したいという人はオークションで購入する人もいるようで、新品よりも中古品市場での値段の方が高くなっている珍現象もみられます。

新型コロナは日本国内の感染者数が抑えられてきました。海外でも経済活動を再開する国が増えてきました。国際航空運送協会(IATA)は国際線の需要が24年まで回復しないと予想しています。タイ国際航空が経営破綻するなど、航空会社の経営が揺らいでおり、リストラで物資を運ぶスペースもなかなか回復しそうにありません。物流費が以前の水準に戻るまでにはかなりの時間がかかりそうです。

(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
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