コロナと同じ深刻さ バッタ禍の第2波が招く食糧危機

日経ナショナル ジオグラフィック社

19年後半、サバクトビバッタの第1波が到来したとき、ほとんどの作物は成熟期に達していたか収穫後だった。しかし、第1波より大規模な現在の「第2世代」は、何よりタイミングが気掛かりだ。

東アフリカでは、主要な作物の生育期が3月中旬ごろに始まる。この時期はバッタの攻撃を特に受けやすいと、慈善団体ファーム・アフリカで農業技術の責任者を務めるアナスタシア・ムバティア氏は言う。「(バッタに)新芽を食べられたら、作物は生育できません。種をもう一度まくしかありません」。しかし、生育に最適な天候はもう終わっているため、2度目の栽培は失敗する可能性が高い。

サバクトビバッタは昼間に飛行し、夕方にねぐらにつく傾向がある。殺虫剤の散布者ができるだけ群れを見つけられるよう、レマスラニ氏は午後に居場所を特定しようと試みている(PHOTOGRAPH BY DAVID CHANCELLOR, NATIONAL GEOGRAPHIC)

殺虫剤の散布も困難

バッタの爆発的な増加を食い止めるため、政府はしばしば空中あるいは地上から殺虫剤を散布する。しかし、FAOのフェランド氏は、新型コロナウイルスが世界的に流行しているため、殺虫剤を調達するのが難しいと述べている。「供給の遅延が発生しています。航空便が世界規模で減少しているため、今は(殺虫剤の在庫)管理が通常と全く違う状況になっています」

バッタの大発生をあまり経験したことがないケニアのような場所では、殺虫剤をどこに散布すべきかの判断がさらに難しくなっている。バッタの飛行パターンは主に風によって決まり、1日に約130キロの距離を移動することもある(1988年には、サバクトビバッタがわずか10日間で西アフリカからカリブ海に到達している)。

長距離を高速で移動するバッタの群れを追跡するため、FAOは現地に暮らす人々からの情報を頼りにしている。レマスラニ氏も情報提供者の一人で、1月に自らバッタの大群の追跡を開始した。

レマスラニ氏は広範な人脈を活用し、バッタの群れを見かけた人から電話をもらうようにしている。電話を受けたらバイクタクシーに乗って群れがいる場所に急行、eLocust3mというモバイルアプリに座標を入力している。eLocust3mは米ペンシルベニア州立大学のプラントビレッジ・プログラムを主催するデイビッド・ヒューズ氏らがFAOの依頼で開発したアプリ。追跡データは政府と共有され、政府が最善策を判断することになる。

レマスラニ氏は自宅の外で降り始めた雨から身を守るため、肩に赤いショールを巻きながら、ビデオチャットで次のように語った。「私の家は貧しく、オルドニイロのカトリック教会の資金援助を得て、小学校から高校まで通うことができました。私は会ったこともない人に助けられたのです。支援者にお金を返すことはできませんが、立派な行いでコミュニティに恩返しをしたいと思っています」

(文 HALEY COHEN GILLILAND、写真 DAVID CHANCELLOR、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年5月18日付]

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