群生タイプに「変身」
サバクトビバッタは湿った場所に産卵するため、乾燥地域に大雨が降ると大発生する。植物が近くにある砂地に産卵すれば、幼虫は羽が生え餌を求めて飛び立つまで、そこで生き延びることができる。
サバクトビバッタは通常、分散する空間があれば、互いを積極的に避ける。しかし、環境が良好な場合、個体数は3カ月ごとに20倍まで増える。個体数の急増によって密度が高まると、ある行動の変化が誘発される。「孤独相」から社会的な「群生相」に変わり、大群を形成するのだ。

近年、繁殖と移動の条件はただ良好なだけではない。まさに理想的な条件だ。18年から19年にかけて、海水温の異常な上昇と関連づけられているサイクロンがインド洋から次々と上陸し、「何もない一角」と呼ばれるアラビア半島の砂漠が水浸しになった。その後、サバクトビバッタが急増した。
「私たちは砂漠と聞くと、しばしば過酷で生産性の低い環境を思い浮かべます。多くの場合、その通りです」と、ナショナル ジオグラフィックの支援を受けている昆虫学者で進化生物学者のディノ・マーティンズ氏は話す。同氏がエグゼクティブディレクターを務めるケニア北部のムパラ研究センターでは、サバクトビバッタのゲノム配列を決定し、孤独相から群生相への変化を誘発する環境因子、遺伝因子を突き止めようとしている。「(砂漠が)最適な環境になると、彼らは素早く変化し、生物学的に活発な状態に移行することがあります。簡単に言えば、私たちが今見ているのはそのような状態です」

19年6月までに、サバクトビバッタの大群は移動し、紅海を渡ってエチオピアとソマリアに到達。そして、10~12月に東アフリカで降り続けた異常な大雨に助けられ、南のケニア、ウガンダ、タンザニアまで拡大した。
バッタたちが東アフリカに上陸してからは良好な繁殖条件が続いているため、群れはその規模を拡大し続けている。FAOで東アフリカの回復チームを率いるシリル・フェランド氏は「20倍かどうかはわかりませんが、(個体群は)はるかに大きくなっています」と話す。FAOは、サバクトビバッタの状況を世界規模で監視している。