昇進できず50歳、定年までどう過ごす?
作家、石田衣良さん
50歳。まじめに働いてきたものの昇進もできず、管理職にチャレンジしたがなれませんでした。同期や後輩に追い抜かれ焦燥感でいっぱいです。定年退職までにはまだ10年ほど残されています。今後どのようにサラリーマン生活を過ごすべきでしょうか?(東京都・50代・男性)
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50歳にして決して越えられぬ壁が見えてしまった。昇進は難しそうだし、社内での評価も自分が信じていたほど高くはなかった。ほんとにがっかりですね。一生をかけた仕事なのに、後輩にまで追い抜かれ、プライドもやる気もずたずたになってしまった。お気持ちはお察しします。
ですが、日本経済新聞を読みつつ人生の後半を迎えたビジネスマンの多くは、あなたと同じ思いを胸の奥に秘めて今日も働いています。社長の席は一つだけ、大企業の取締役だってせいぜい20名ぐらい。9割以上が望むポジションに手が届かず定年退職を迎える。企業人の宿命です。
おれは傷ついたといって自分の感情を優先し、これから10年ふて腐れたまま働き続ける。あるいは最低限の燃費でゆるゆると目の前の仕事をこなす。それもいいでしょう。
あなたはがんばってきたのだから、最後の10年くらい自分の働き方を好きに選ぶ自由はあるはずです。職場の同僚にとってはたまらないかもしれませんが、出世のために無理をしたツケを取り戻すくらい構わないと、僕は思います。不機嫌で不活性な人間になり、自分を正当に評価しなかった周囲に復讐する道です。見回すとその手の人も、決して少なくはないですよね。
逆に社内のポジションが変えられないなら、気持ちを変えるという手もあります。結局のところ、自由になるのは自分の「心」だけです。
出世をあきらめた会社員は怖いものなしと昔からいいますね。きちんと仕事を済ませたら、あとは趣味や家族孝行に残されたエネルギーを全乗せする。今の暮らしのいい部分を拾い上げ、できる限り朗らかに快活に生きる道です。
あの人、出世しなかったけどいつも上機嫌だなあ。周囲からそう見られる人になるという選択です。自分の心模様を決めるのは、各人に任された天与の権利です。傷ついたプライドはひとまず横において、心のお天気を調整してみてください。出世なんて些細(ささい)な問題になりますよ。
50歳は真の実力をつかみ、人生を観念する年齢です。同時に自分を笑う余裕が嫌でも生まれてくるはず。できなかったことを数えるより、次にやりたいことを計画しながら、明日も元気に出社してください。
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