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人間に遭わない… 福島立入禁止区域で増える動物たち

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

新型コロナによって世界中の人々が家に閉じこもる中、動物たちが自由を謳歌しているようだ。英国ウェールズでは野生のヤギが町を練り歩き、フランスではナガスクジラがマルセイユの港近くに近づき、スペインやトルコ、イスラエルではイノシシが都市をわが物顔でうろついている。

ベネチアのイルカやロシアのライオンなど、ソーシャルメディアで話題になった目撃情報の一部はデマだと判明したが、人間が消えた恩恵を受けている動物も確かにいる。

人間が元の生活に戻れば、こうした動物の行動の変化も元に戻るだろう。しかし、より長期にわたって人の居住地が変化してきた場所もある。事故や戦争により立ち入りが禁止された場所だ。大きな原発事故の現場となったチェルノブイリ原子力発電所と福島第一原子力発電所の周辺や、北朝鮮と韓国の間の非武装地帯などである。

福島における最近の研究やその他の研究によると、人間がただ存在することが、野生動物の数を制限する最大の要因となっているようだ。こうした地域では、人間を避難させるほど放射線の影響がありうるにもかかわらず、動物たちは増えているという。

だからといって放射線は動物に害がないと言えるわけではない。だが、その影響の大きさは、特に低線量被曝の場合、議論の余地があり、人間と比べると影響が小さい可能性は考えられる。

現在のパンデミック(世界的な大流行)下で「人間は家に閉じこもり、自然はほっと一息ついているのです」と、福島大学の放射線生態学者のトーマス・ヒントン氏は話す。同氏のチームは2020年1月、街から人がいなくなった際に動物に及ぶ長期的な影響について、学術誌「Frontiers in Ecology and the Environment」に論文を発表した。

同氏は、野生動物のために人口密集地を放棄しよう、常に屋内にとどまろうと提案しているわけではない。しかし、人間がいなくなった土地で動物が復活している事実は、野生動物のために生息地を確保し、あるレベルまで干渉しないことの重要性を示していると、同氏は言う。

人が去った地域に動物が多数、福島

11年3月、東北で大規模な地震と津波が発生し、チェルノブイリに次ぐ世界で2番目の規模の原発事故を引き起こした。福島第一原発では、浸水による停電で3基の原子炉がメルトダウンし、周辺の海岸線で放射性降下物が確認された。全体で、原発周辺の1150平方キロの区域で、約16万人が避難を余儀なくされた。

放射線汚染と人の立ち退きが福島周辺の野生動物に与えた相対的な影響を調べるため、米ジョージア大学の野生生物生態学者ジム・ビーズリー氏とヒントン氏らのチームは、原子力発電所跡近くの120カ所にカメラトラップを設置し、16年から17年に2カ月間の調査を2度行った。

調査地は、3つの区分から選んだ。当面の間は立ち入りが完全に禁止されている場所、当初は立ち入りが禁止されたが現在は少し人が戻ってきた場所、類似の環境で人が居住している場所の3種類である。

その結果、イノシシやニホンザル、タヌキなどいくつかの種は、人の立ち入りが許可されていない地域で最も多く見つかった。全体として、動物の数にかかわる最も重要なファクターは、生息環境のタイプと立入禁止の状況であり、放射線レベルの高さではなかった。

「こうした汚染された地域でも動物は生存できるというのは、皮肉なことです」とビーズリー氏は話す。手つかずの広大な野生生物保護区の方が動物にとっては良いのだが、調査結果は、動物が放射線下でも多数生息できるということを示している。

チェルノブイリにも多くの動物が

1986年、ウクライナのプリピャチにあるチェルノブイリ原子力発電所の原子炉が爆発、大規模な火災が発生して周辺地域に放射性物質を撒き散らした。これにより、現在のウクライナとベラルーシにまたがる広大な地域が立入禁止区域に指定された。この地域からは10万人以上が強制避難させられ、いまだ戻ることは許されていない。

過去20年以上にわたる調査から、チェルノブイリの立入禁止区域には、場合によっては近くの自然保護区に匹敵するほど多彩な動物が数多く生息していることがわかっている。だが、放射線が動物に与える影響という点では、それぞれ調査結果が異なる。

たとえば、米サウスカロライナ大学の生物学者ティム・ムソー氏によると、生殖障害や突然変異率の上昇が、鳥類やげっ歯類に見られるという。ハタネズミに関する研究では、こうした突然変異が親から子に遺伝することがあると示された。

フランス、パリ南大学の研究員アンダース・モラー氏は、「チェルノブイリで特定の鳥や特定の哺乳類が増えているかもしれませんが、健康状態が良くないこともわかっているのです」と話す。

放射性物質、特にチェルノブイリでも福島でも検出された元素であるセシウム137から出る放射線は、数十メートル離れていても届く可能性があり、体組織やDNAが損傷を受ける。

いずれにせよ、人が消え、猟をしなくなった結果、ハイイロオオカミやタヌキ、アナグマをはじめ、かつては存在しなかったか希少だった多くの種が、現在のチェルノブイリには相当数生息している。

複数の証拠が「チェルノブイリの立入禁止区域に中型から大型の哺乳類が多数生息していることを示しています」とビーズリー氏は語る。

朝鮮半島の非武装地帯でも

人が消えて野生生物が増えたもう1つの地は、朝鮮半島の非武装地帯(DMZ)だ。

朝鮮戦争の休戦後、北朝鮮と韓国は2国間にDMZとして知られる無人地帯を設けた。今日でもかつての村跡があり、軍用品、兵士の遺骨、地雷が散らばっている。

緊迫した状態が、この幅4キロの境界域で70年近くも続いてきた。そのおかげで、絶滅危惧種のタンチョウ、ツキノワグマ、コウライアカギツネ、ヤギに似たオナガゴーラル(チョウセンカモシカ)など、希少動物が繁栄してきた。

自然保護活動家は、DMZ自体を東アジアの野生動物にとって最も重要な場所の1つだと認識している。

今回の研究と現在のパンデミックからの教訓として、「私たちは問題を特定できました。問題は私たち自身だったのです」とヒントン氏は語る。

「これがきっかけとなり、地球は1つしかなく、取り返しのつかないことをしてはならないと人々が気づくことを私は願っています」

(文 DOUGLAS MAIN、訳=牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年5月8日付]

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