「ズーム疲れ」はなぜ? 大きな負担、脳にかかる

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/5/23

一方で恩恵も

一方で、ビデオ会議への急激な移行は、複数の人が話している状態にストレスを感じる自閉症の人など、対面でのやりとりに困難を抱える人にとっては恩恵となっている。

ニュージャージー州の報道機関「クライメート・セントラル」の編集者、ジョン・アプトン氏は、最近になって自らが自閉症であることを知った。昨年末、アプトン氏は、人が大勢集まる会合に出席したり、対面での会議に参加したり、職場で交わされる世間話をしたりといったことから生じる「おぼろげな緊張感や不安」といった精神的な負担に悩まされていた。

もし自分が人からの評価を気にしすぎている、あるいは過剰な刺激を受けていると感じたときには、カメラをオフにして自分のエネルギーを節約しよう(PHOTOGRAPH BY BENJAMIN RASMUSSEN)

今ではパンデミックによって同僚たちが皆、リモート勤務となった。ビデオ会議では、通常の会議よりも話をする人数が少なく、会議前後の世間話も短くなった結果、アプトン氏は、自分が感じていた緊張や不安は大幅に軽減されたと述べている。

アプトン氏のこうした経験は研究によって裏付けられていると語るのは、発達障害者や知的障害者のオンラインにおける交流を研究している、カナダ、ケベック大学ウタウエ校のクロード・ノルマン氏だ。氏によると、自閉症の人たちは、会話の中で自分がいつ話すべきなのかを理解しづらい傾向にあるという。そのため、ビデオ会議で頻繁に生じる発言と発言の間のタイムラグが、一部の自閉症の人にとって有利に働いていると考えられる。「ズームを使っているときには、次に話すべきはだれなのかが明確ですから」と、ノルマン氏は言う。

いずれにせよ、ビデオ会議は、わずか数年前には不可能だった方法で、人と人とを結びつけてくれている。

ビデオ会議が引き起こす精神的な混乱に、人々がうまく対処することを覚えれば、いずれはズーム疲れを軽減することができるようになるかもしれない。もし自分が人からどう見られているか気にしすぎている、あるいは過剰な刺激を受けていると感じたときには、カメラをオフにするようにと、ノルマン氏は勧めている。可能であれば電話で会議を行い、それを歩きながらやってみるのもいいだろう。

「歩きながら話をすることは、創造性を向上させ、ストレス軽減にも寄与することがわかっています」と、ノルマン氏は言う。

(文 JULIA SKLAR、訳=北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年5月6日付]

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