業務の記録は1分刻み テレワーク先進企業の本気度

「役職者だけに紙資料」は一番の悪手

――テレワーク活用への積極的な姿勢は、人材採用にも有効に働いていますか?

「社員数は年々増えており、20年3月期までの7年間で約1.3倍になりました。社員の9割以上が中途採用者ですが、実態としてテレワークに魅力を感じて転職してきた社員はそれほど多くないと思います。数年前までテレワークは認知度や普及率が低かったため、転職の重視項目に挙げられることはあまりありませんでした。ただ、今回の在宅勤務を機に、日本の企業にもテレワークが急速に定着していきそうです。これからは転職理由の一つに挙げる人も増えてくるでしょうから今後に期待したいです」

「実際に転職してきた社員に目を向けると、全社員がテレワークを利用している環境や業務管理のデータ・共有化の仕組みに慣れるまで少し時間がかかっています。しかし、テレワークによって業務が効率的になり、収益が上がって、給与もアップするといった良いサイクルが回ると、働くモチベーションにつながっているようです」

――在宅勤務でも長時間労働を防ぐ仕組みは必要です。どのように対応していますか?

「テレワークポリシーを制定しています。自宅は休息の場ということを大前提とし、短時間なら自由に在宅勤務をしてもよいが、長時間になったり残業時間が増えたりする場合は、事前に会社や上司に相談しなくてはなりません。マンアワーシステムでは社員一人ひとりの業務負荷が見える化されるため、特定社員に業務が集中しないよう平準化を進めています」

「社員は年1回、上司との面談で年間残業時間を決めます。月末の残業予定時間が一定の基準を超える可能性が出た時点で、本人や直属の上司に「長時間労働アラートメール」が通知されます。個人が仕事や問題を抱え込むのではなく、上司や仲間も巻き込んで対策できるような仕組みを構築しています」

「テレワーク業務中に事故が起きたときの対応も考えておく必要があります。日々の業務管理をシステム化しておけば、どのプロジェクトで事故にあったのかが証明され、業務中であることがはっきりすれば労災の対象となるわけです。これまで労災事故は起きていませんが、会社があらかじめ対処法を示すことで、社員に安心感を伝えることになるでしょう」

――導入に際して苦労したことはありますか?

「マンアワーシステムを立ち上げたときは、社員に毎日入力をさせることは大変でした。導入当初は社員数60~70人くらいでしたが、全員から『自分の行動を朝から晩まで上司や経営者に見られることは嫌だ』と言う声が上がり、なかなか習慣づきませんでした。私自身もそうですし、気持ちはよく分かりますが、何度も必要性を説くしかありません。業績を上げている腕に覚えがある社員ほど従わないもので、導入して1年たったとき、3人の社員がやっていませんでした。それぞれ呼び出して1時間以上かけて話をしましたが、最終的に1人は会社を辞めました。2人のうち今は1人だけ残っており、エース級で働いています」

――テレワーク導入で肝になることは何ですか?

「ペーパーレス化・デジタル化を徹底的に進めることが一つです。企業によっては、役職の高い人には例外的に紙を認める企業もありますが、これが一番ダメです。社内制度としてデジタルも紙もある状態では、情報発信する側は2通りで進めなくてはならず非効率的です」

「就業制度を細かく設計することも大事です。社員に環境だけを与えても不十分で、人事や給与制度、導入する理由などを明確化しないとうまくいきません。テレワークは家で制限なく仕事をするということではなく、社員と上司、会社の信頼関係の上に成り立ちます。制度は働いている社員の意識、働き方の生産性、効率化のレベルに合わせて少しずつ進化させていくことが必要です」

(日経キャリアNET 編集チーム)

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