日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/5/16

44億年前のジルコンはどうしてできた?

地球の変遷の記録は、岩石の中に記される。しかし、空気や水の流れが古い岩石を削り去り、海溝が古い地殻をのみ込んでゆくため、その歴史の多くが抹消されてしまっている。なかでも原始地球の歴史は特によくわかっていないが、地質学者の多くは、長期にわたりほとんどなにも起こらなかったと考えている。火山灰でかすんだ空の下、動きのない、岩だらけの地面が広がっていたという。

ただし、そう考えた時に不思議なことがあった。オーストラリアで発見されたジルコンという非常に安定な鉱物の結晶が、放射性同位体を使った年代測定で44億年前のものと確認されたことだ。ジルコンは花崗岩など化学的に複雑な岩石の中から見つかることが多く、科学者たちは、地質学的に不活発だった当時の地球がそんなに高度な物質を作り出した機構について、意見の一致をみていないのだ。

ロック氏は、月が鍵を握っているのではないかと考えた。

月は、地球が形成された直後にできた。大きな天体が地球に激突した後、飛び散った破片が地球の周りを回る中で互いに衝突し合い、やがてほぼ球形の衛星(=月)を形作ったのだ。シミュレーションの結果は、当時の月が、現在よりはるかに地球に近いところにあったことを示唆している。これだけ近ければ月は地球の自転に影響を及ぼしていたはずだが、あまり踏み込んだ研究は行われてこなかった。興味を持ったロック氏は、月が地球の自転に及ぼした影響からどんなことが起きたかについて、独自にシミュレーションを行った。

地球と月のダンス

地球と月は、重力で分かちがたく結ばれてダンスを踊っている。物理の法則により、一方がふるまいを変えたら、バランスを保つために他方もふるまいを変えなくてはならない。「角運動量保存の法則」と呼ばれる法則により、月が近くにあるときには地球は高速で自転し、月が遠くにあるときには地球はゆっくり自転する。

現在の月と地球の距離は約38万キロメートルだが、最初は約1万3000キロメートルしか離れていなかった。地球の自転は高速で、1日の長さはわずか2.5時間ほどだった。その結果、形成当初は球形だった地球は、かなり楕円形になっていた。

「初期の地球がそんなに潰れていたとは、考えたこともありませんでした」と、米テキサス大学ダラス校のプレートテクトニクスの専門家ロバート・スターン氏は語る。「突拍子もない説に聞こえるかもしれませんが、理にかなっています」。なお、彼は今回の研究には関与していない。

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