任天堂が3月20日に発売した「ニンテンドースイッチ」用ゲーム『あつまれ どうぶつの森』が好調だ。発売10日間で国内売上本数は260万本を突破(パッケージ版)。ニンテンドースイッチ本体の売り上げも押し上げている。新型コロナウイルスも影響するこのゲームのヒットの裏側をゲームジャーナリストの野安ゆきお氏が読み解く。
累計販売本数の記録を塗り替えるか
『あつまれ どうぶつの森』が猛烈な勢いで売れている。発売3日間の国内売上本数は188万626本(以下、数字は「ファミ通」調べ)。ニンテンドースイッチ向けソフトとしては『ポケットモンスター ソード・シールド』(2019年11月発売)や『ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ』『同 Let's Go! イーブイ』(18年11月発売)を上回る歴代トップの数字だ。
以降も勢いは衰えず、20年3月末までの10日間で国内売り上げを260万8417本まで伸ばした。今後は、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(任天堂、18年12月発売)が達成したニンテンドースイッチ向けソフト累計販売本数の最高値、362.3万本を超えるかが注目される。
『あつまれ どうぶつの森』の好調は、ゲーム本体であるニンテンドースイッチの売り上げもけん引している。20年3月のニンテンドースイッチの販売台数は、前月比53万台増の83万6094台。これによって、ニンテンドースイッチは発売から約3年で累計販売台数1300万台を突破し、「Wii」を上回った。
驚くべきは、この数字が最悪の条件下で達成されたことだ。新型コロナウイルスの感染拡大は、中国国内でのニンテンドースイッチの生産・流通に影響を及ぼし、出荷の遅延を招いた。その結果、日本国内では3月20日前後にニンテンドースイッチが、3月末には携帯版である「ニンテンドースイッチライト」が店頭から消えた。公式のオンラインショップでは、5月に入っても品切れ中だ。
このように新規ユーザーを獲得しにくい状況にもかかわらず、『あつまれ どうぶつの森』は、過去の大作ソフトをはるかに上回るスタートダッシュを切ったのだ。
テレビゲームは外出自粛の「友」になる
一方で、新型コロナウイルスに揺れる社会情勢が『あつまれ どうぶつの森』への期待を高めた側面もある。
今、世界では新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、多くの人が外出自粛を余儀なくされている。学校は休校となり、子供たちは外で遊んだり友達と会ったりできなくなってしまった。
この状況に、ゲーム産業は素早く対応した。米アクティビジョン・ブリザードや米ライアットゲームズ、米Twitchなど、欧米のゲーム関連企業18社は「#PlayApartTogether(離れて一緒に遊ぼう)」という啓発キャンペーンを20年3月末に開始。これは新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、自宅にとどまってゲームをすることを推奨するキャンペーンである。
世界保健機関(WHO)もこのキャンペーンに賛同。WHOアンバサダーであるレイ・チェンバース氏は、新型コロナウイルスの感染拡大予防のため、「#PlayApartTogether」キャンペーンを支援するとツイッター上で発表している。自宅で楽しい時間を過ごせるテレビゲームは、人類が新型コロナウイルスに打ち勝つための有用なツールとして、WHOがお墨付きを与える存在になったのだ。
『あつまれ どうぶつの森』が発売されたのはまさにそのタイミング。しかも、大人から子供まで、誰もが楽しめる人気シリーズの最新作だった。