■4位 Shrink~精神科医ヨワイ~ 680ポイント
温かく優しい人柄光る
(C)七海仁・月子/集英社

米国では精神科医をshrink(シュリンク)と呼ぶという。パニック障害、うつ病、発達障害……。日本でも悩みを抱える人は多いが、「精神科は特別なところ」という思い込みが人々の足を遠のかせる。精神科医の弱井はそんな日本の現状を変え、ひとりでも多くの心を救おうと動き出す。「連載1話目から注目していた。ちょっと落ち込んだら会う相手が精神科医だというセリフにもひかれた。日本という国でもっと知ってもらいたい医療」(八木泉さん)。「『そんなこと』で精神科にかかっちゃダメですか?」という弱井の言葉、温かく優しそうな人柄には書店員から共感の声が集まった。「グランドジャンプ」で連載中。

(1)原作/七海仁、漫画/月子(2)集英社(3)既刊2巻(4)600円+税

■5位 コウノドリ 610ポイント
産科医主役 家族の物語に涙
5位 コウノドリ(鈴ノ木ユウ)

年齢・経歴不明のピアニスト「ベイビー」としても活動する産科医の鴻鳥(こうのとり)サクラが主人公。妊娠していると分かっているにもかかわらず、健診を受けなかった「未受診妊婦」や予想もつかない「切迫流産」など様々なテーマを軸に物語が展開していく。

「リアルな描写で話題になった作品。命の重さを考えさせられる。家族の物語でもあって胸が詰まりそうになる」(黒松亜美さん)

妊婦やその家族、人間のつながりを描くドラマに「必ず泣いてしまう」という書店員も多かった。「モーニング」連載中で最終章に突入している。綾野剛さん、松岡茉優さんらが出演してTBS系でドラマ化された。

(1)鈴ノ木ユウ(2)講談社(3)既刊30巻(4)640円+税

■5位 JIN―仁― 610ポイント
江戸が舞台 医療の原点問う
(C)村上もとか/集英社

大学の付属病院に勤める脳外科医の南方仁が2000年から幕末にタイムスリップ。電気も消毒薬も抗生物質もない時代に、歴史を変えてしまうと自覚しつつも医師として出会った人々の命を救っていく。「江戸時代の人々の生き生きとした生活を描きつつ、医療の原点も問うている。圧倒的な面白さ」(神谷康江さん)

医療技術・知識の変遷を知ることができたり、坂本龍馬や勝海舟、緒方洪庵ら実在の人物が多数登場してストーリーに絡んできたりするのも魅力。「スーパージャンプ」に連載。大沢たかおさん、綾瀬はるかさんらが出演してTBS系でドラマ化された。

(1)村上もとか(2)集英社(3)文庫版全13巻完結(4)619円+税(文庫)

■7位 ラジエーションハウス 430ポイント
放射線技師の仕事に爽快感
(C)横幕智裕・モリタイシ/集英社

レントゲンやCT(コンピューター断層撮影装置)で病変を映し出す診療放射線技師。撮影の腕は一流だがコミュニケーションが苦手な五十嵐唯織(いおり)は、幼なじみの甘春(あまかす)杏が放射線科医として働く病院に採用される。病気やけがの真相を探り当てる唯織に最初は反発する杏。ただ2人の距離は徐々に縮まり……。

「放射線技師の仕事ぶりは職人そのもの。ぼんやりと浮かぶ画像から病を特定していく姿は外科医マンガに劣らぬ爽快感がある」(木村歩夢さん)。「グランドジャンプ」連載中。窪田正孝さん、本田翼さんら出演でフジテレビ系でドラマ化された。

(1)原作/横幕智裕、漫画/モリタイシ(2)集英社(3)既刊9巻(4)600円+税

■8位 リウーを待ちながら 410ポイント
感染症に立ち向かう姿必見
8位 リウーを待ちながら(朱戸アオ)

富士山麓の架空の街、横走。駐屯していた自衛隊員が突然吐血して倒れ、同じ症状の患者が相次いで亡くなる。病院には人が押し寄せ、事態は悪化の一途をたどる。日常が徐々に崩壊していくなか、内科医の玉木涼穂たちが拡大する感染症に立ち向かっていく姿を描く。

フランスの作家アルベール・カミュの「ペスト」に登場する医師リウーの名がタイトルにも。「いま絶対に読んでほしい。世界が直面している非常事態に似た状況に驚く。カミュの小説の一節を引用した『ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです』というフレーズが心に迫る」(山内歩さん)。「イブニング」で連載。

(1)朱戸アオ(2)講談社(3)全3巻完結(4)630円+税

■9位 医龍 ―Team Medical Dragon― 310ポイント
病院内外のドラマがリアル
(C)乃木坂太郎・永井明/小学館

かつて途上国で医療チームを率いて多くの人命を救った外科医の朝田龍太郎。教授命令に背いて医療から離れていたのを大学病院改革を狙う明真大学助教授の加藤晶が招く。朝田はチームの人選を任せるよう求めるが……。救命救急の現場から権力闘争まで病院内外のドラマをリアルに描く。「『誰かが助けてくれるのがチームじゃねえ。死にものぐるいで全員の役に立とうと思うのがチームだ。』という朝田龍太郎のセリフに感銘を受けた」(石原聖さん)。「ビッグコミックスペリオール」で連載。フジテレビ系で坂口憲二さん、稲森いずみさんら出演でドラマ化もされた。

(1)乃木坂太郎、原案/永井明(2)小学館(3)文庫版全16巻完結(4)800円+税(文庫版)

■10位 放課後カルテ 280ポイント
子供に潜む病気と向き合う
10位 放課後カルテ(日生まゆ)

日中に耐えがたい眠気に襲われるナルコレプシー、拒食症に過食症、顔面に起こるベル麻痺(まひ)……。育休中の養護教諭の代わりに大学病院から小学校の保健室にきた小児科医の牧野が子どもに潜む病気と向き合う。無愛想で口も悪いが、鋭い観察眼で一目置かれる存在になっていく。「一概に病気、けがと言えない身近な問題が胸に刺さる。今では知名度が高いナルコレプシーをこのマンガで知った方が多いのでは」(西室浩之さん)

ナルコレプシーに悩む少女の言葉「私を初めて見つけてくれた先生だよ」に感動したという声も。子育て世代の心もつかむ作品だ。「BE・LOVE」で連載。

(1)日生マユ(2)講談社(3)全16巻完結(4)429円+税

手塚作品先駆け 50年で分野充実

新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、医療現場の奮闘は続く。医師や看護師らが患者とともに難病と闘う姿を描いたマンガを読めば、改めて感謝や応援の気持ちがわいてくるだろう。

医療マンガといえば、無免許の天才外科医が活躍する手塚治虫作「ブラック・ジャック」を思い浮かべる人も多い。医療分野でのマンガ・コミックス表現の活用を考える日本グラフィック・メディスン協会によると、日本の先駆けは手塚作品の「きりひと讃歌(さんか)」という。連載開始は1970年。2020年は50年の節目で、協会は「医療マンガ50年史」のプロジェクトを進めている。

今回00年以降に連載が始まった比較的新しい作品を対象に、医療現場の実情を描いたなどの基準で選んでもらった。外科医が主人公のイメージは強いが、近年はテーマも多様に。病理医など患者と会う機会の少ない仕事を描く作品も並んだ。自らの闘病体験をもとにしたコミックエッセーも増えている。店頭で入手しづらいものもあるが、出版社のサイトでの試し読み、電子書籍という形で楽しめるものも多い。

■ランキングの見方 数字は専門家の評価を点数化。(1)作者名(原作・原案など含む、敬称略)(2)出版社(3)刊行数(4)最新巻の価格(本体+税)。写真は三浦秀行撮影。

■調査の方法 2000年以降に連載が始まった、医療現場を舞台にしたマンガから、日本グラフィック・メディスン協会の落合隆志代表理事や漫画家マネジメントの田中香織さんらの助言をもとに26作品を候補に選定。書店員13人に「医療現場の実情が垣間見える」「健康管理に役立つ知識が学べそう」「ストーリーやキャラクターが魅力的」との観点でおすすめ順に10作品ずつ挙げてもらい、編集部で集計した。(生活情報部 河野俊)

■今週の専門家 ▽赤須恵美(オンライン書店e-hon)▽石原聖(丸善仙台アエル店)▽神谷武之(書泉グランデ)▽神谷康江(有隣堂横浜駅西口店)▽木村歩夢(紀伊国屋書店新宿本店)▽黒松亜美(八重洲ブックセンター)▽渋谷孝(ブックファースト新宿店)▽西室浩之(オリオン書房ノルテ店)▽日吉雄(漫画全巻ドットコム)▽古川航貴(芳林堂書店高田馬場店)▽八木泉(MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店)▽山内歩(文禄堂荻窪店)▽山岡江梨子(宮脇書店本店)=敬称略、五十音順

[NIKKEIプラス1 2020年5月2日付]

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