アバターが受け取る卒業証書 遠隔操作でも温かみBBT大学 経営学部グローバル経営学科 学科長・教授 谷中修吾氏

その結果、完全オンラインでありながら温かみが生まれ、一体感のある卒業式を行うことができました。ニューミーによる世界初の卒業式は国内のメディアで取り上げられただけでなく、世界の主要メディアでも報じられました。

この企画は、2月中旬、卒業式のあり方について討議した学内の会議で私が発案し、そこから1カ月半で実現したものです。ほぼ1人で主要な実務をこなし、超速で立ち上げたものでしたが、着想した時点で「これは成功する」という確信がありました。それは、アバターロボットの「ある特徴」を知っていたからです。

アバターロボットの特徴とは何でしょうか。私は、「オンラインを通じて、物理的に現場介入できる」ことだと思います。アバター卒業式も、いってみれば、ロボットを遠隔操作して、卒業証書を受け取るだけの企画です。しかし、オンラインを通じて現場に介入できるという新たな価値が加わることで、単なるビデオ視聴とは決定的に異なるものとなります。

そして、アバターロボットを操作している人のみならず、現場で応対する人、オンラインで視聴する人にとっても、一緒に現実を作り上げているという体験が生まれます。これが「一体感」や「温かみ」をもたらすのです。

卒業式では学生代表が自宅からアバターロボットを操作、ほかの卒業生はビデオ会議サービスで参加した

なぜ私がアバターロボットの特徴を体感的に知っていたかというと、ANAホールディングスが2008年、アバターロボットのプロジェクトを立ち上げた当初から、さまざまなコラボレーションを重ねてきたからです。自らの分身として、遠隔地にあるロボットを時差なく動かすことができるということは、さながら瞬間移動です。コラボレーションを通じて、私なりに「オンラインを通じて、物理的に現場介入できる」という価値を強く感じていました。

このため、学内で卒業式開催の是非が議論された際、すぐさま「アバター卒業式」というアイデアがひらめきました。誰も体験したことがありませんから、とにかく私が実現させるしかありません。主要な実務をすべて1人でこなしましたが、アバターロボットの特徴を踏まえれば、誰でも実践可能だと確信しました。卒業証書を受け取るという行為に着目したように、「オンラインを通じて、物理的に現場介入できる」という価値を生かした演出に焦点を合わせればよいのです。

一般的に式典や催事のオンライン開催を検討すると、多くの場合は「ビデオ通話」か「音声通話」、もしくは「チャット」となります。もちろん、それらも大変有効ですが、物理的に現場介入することはできません。つまり、オンラインとリアルを交錯させるアバターロボットは、全く別の次元の価値を有するものだといえるでしょう。

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