万一に備えて貯金 会社員の目安は手取り3カ月分
「毎月積み立てで貯蓄している」という人は立派な「たまる女」です。だからといって、不安や疑問がないとは言えません。そんな方からよく聞かれるのは「いくらためればいいのか分からない」という悩みです。
貯蓄の目的は大きく2つ
「いくらためればいいのか」。その答えは貯蓄の目的を考えると導くことができます。何のためにお金をためなくてはいけないのでしょうか。これは大きく2つに分けられます。
一つは「万一に備えるため」。長い人生には想定外のことがいろいろと起こります。病気やケガ、事故、自然災害、収入の減少、失業など、不測の事態が起こって急にお金が必要になることもありますよね。そんなときに貯蓄がないと、お金が足りなくて生活が立ち行かなくなることが考えられます。
そうならないよう、万一のときに備えるのです。貯蓄があれば困ったことが起こったとき、少なくとも経済的には支えとなってくれます。金額の目安は「手取り月収の3カ月分」。これだけあれば、3カ月間は収入が途絶えても暮らしていけることになります。会社員の場合、失業したときに雇用保険の基本手当、いわゆる失業保険が受け取れます。自己都合で退職した場合、手当が受け取れるのは手続きしてから約3カ月後。その点でも、手取り月収の最低3カ月は確保しておきましょう。
自営業やフリーランスなどで雇用保険に入っていない人は、手取り月収の6カ月分あるとよいですね。会社員でも6カ月分あれば安心度がアップします。これから積立貯蓄を始める人は、まずは3カ月が目標。それがクリアできたら6カ月を目指しましょう。
手取り月収の3カ月分をゼロから積み立てる場合、月収の2割を毎月積み立てていくと15カ月、3割だと10カ月かかる計算です。ボーナスがある人ならもっと早くためられます。すでに貯蓄のある人は、手取り月収の3カ月分を緊急用のお金として生活費の口座とは別の口座に取り分けておくとよいでしょう。「万一」のことが起こってためておいたお金を使った場合は、できるだけ早く元の金額に戻しておくことも大切です。
時期と目標を決めて積み立て
貯蓄のもうひとつの目的は「将来のイベントや夢を実現すること」です。人生にはまとまったお金が必要なイベントがあります。例えば、結婚、マイホームの購入、子どもの大学進学など。資格を取りたい、留学したい、お店を持ちたい、起業したいなど、いろいろな夢を実現するにもお金が必要になります。将来のイベントに備えたり夢を実現したりするためには、計画的にお金をためていかなければなりません。
イベントや夢があっても「いつか○○したいな~」のように漠然としていると、モチベーションが上がらず、なかなかためられないでしょう。できれば時期と目標額を決めたほうがいいですね。例えば「5年後にマンションを買う。そのためにあと300万円ためる」といった具体的な目標があれば、「実現するには1年で60万円積み立てればよいから、毎月3万円とボーナス時に12万円ずつ」というふうに、積み立てプランを立てることができます。イベントや夢が複数ある場合は目標ごとに金額を決め、積立先や口座を分けるとよいかもしれません。例えば、「財形貯蓄は○○用、積立定期預金は△△用」といった具合です。
今はこれといったイベントも夢もないという人もいるかもしれません。でも、この先もずっとそうとは限りませんよね。やりたいこと、かなえたい夢、実現したい目標ができたとき、お金がなくてあきらめる、というのは悲しい。そうならないために貯蓄しておきましょう。お金があればできることが増え、人生の選択肢が広がります。
その場合も目標があったほうがためやすいので、切りのいい金額、例えば「○年後に100万円」というふうに決めてはどうでしょう。目標どおり100万円たまったときの達成感はきっと大きいはず。また、切りのいい金額をためると、「せっかくためた100万円を99万円にはしたくない」というふうにキープしておきた気持ちが働いて、安易に使ってしまわなくなります。
貯蓄する目的がはっきりしてためる目標が定まれば、具体的な積み立てプランができます。それを財形貯蓄や積立定期預金などの先取り貯蓄で自動的にたまるようにしておけば、万一に備えられ、夢も実現できます。貯蓄がなかなかできない「たまらない女」という人も、目的や目標があればためられるのではないでしょうか。
もちろん本当に必要なときには、ためたお金を使ってかまいません。お金は使うためにあるのですから。しっかりためる、そしてためたお金を有効に使う、それができるのが本当の「たまる女」です。
オフィス・カノン代表。ファイナンシャルプランナー(CFP)、1級ファイナンシャルプランニング技能士。千葉大卒。法律雑誌編集部勤務、フリー編集者を経て、ファイナンシャルプランナーとして記事執筆、講演などを手掛けてきた。著書に「だれでもカンタンにできる資産運用のはじめ方」(ナツメ社)など。http://www.m-magai.net
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