「正直営業が勝つ」漫画で知る 不動産取引の落とし穴漫画『正直不動産』原案者に聞く

夏原武氏(右)と大口克人・「日経マネー」発行人
夏原武氏(右)と大口克人・「日経マネー」発行人

「正直不動産」はビジネス漫画でも珍しい不動産取引をテーマにした作品だ。「千三つ」とも言われるほど嘘が多いとされる不動産業界で、主人公の営業マン・永瀬はあるきっかけから嘘が上手につけなくなってしまう。当然営業成績は急降下でクビ寸前、しかし彼は「客が聞かないことは言わない」という業界の中で、逆に正直営業を武器に戦っていこうとする……。我々消費者も人生で一番高い買い物において後悔しないよう、不動産取引をする前に一度は読んでおきたい作品だ。最新刊・第8巻の発売に際して、「日経マネー」発行人・大口克人が原案者・夏原武氏と「お金と不動産」という切り口で語り合った。

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この作品は消費者にとって読む“特効薬”

夏原 大口さんと最初にお会いしたのは、随分昔でしたね。

大口 そうですね。夏原さんが原案をされていた漫画『クロサギ』の連載が始まってすぐの頃、取材に伺ったのが最初です。

(C)大谷アキラ・夏原武・水野光博/小学館「ビッグコミック」連載中

夏原 当時、詐欺師や闇金、アンダーグラウンドな取材を多くしていたので、「信頼度ナンバー1と呼ばれる投資情報誌の『日経マネー』が、なんで俺に会いたいんだ?」と驚きました(笑)。

大口 ハハハハハ。「お金をためるだけじゃなく、騙(だま)されないことも大事だよ」というお話をお聞きしたかったんです。そんな夏原さんが、再びお金をテーマにした漫画を始めたと知り、連載当初から『正直不動産』を愛読しています。

夏原 ありがとうございます。僕は、もちろんお金の流れには興味があるんですが、そこに関わる人間模様が好きなんです。今、大口さんに『正直不動産』を“お金をテーマ”にした作品と言っていただけてうれしいんですが、不動産というと、どうも字面の問題なのか、直感的に金の話というのが伝わりにくい。不動産の“産”は財産の“産”、まさに、この漫画はお金がテーマなんです。

大口 そうですね。しかも、不動産というジャンルは、ほとんどの消費者がなんらかの形で不動産業者と関わりを持ちながらも、知識が乏しいというのが現状ですよね。専門誌記者でも『正直不動産』を読んで、「こんな落とし穴もあったのか」と驚く事例が多く出てくるので、消費者にとってこの作品は、まさに“読む特効薬”だと思います。実は、かく言う私も、不動産売買の仲介手数料は「物件価格の3%」が上限値にすぎないと、この漫画を読んで初めて知りました。

賃貸物件の仲介手数料は借り主と貸し手で折半なので、本来は半額でいいというのも一般にはほとんど知られていない (C)大谷アキラ・夏原武・水野光博

夏原 消費者が普通には知らないことも多く、さらには「聞かれなければ言わない」という不動産業界の体質が残ってますからね。もちろん、中には誠実な不動産屋もいますが。ただ、家を借りるにしてもそうですし、ましてや家を買うというのは“人生最大の買い物”とも言われるように、生涯でそう何度もないことですから、知識不足になっても致し方ない一面はあるんですよね。

大口 しかも、お金って不思議なもので、例えば「スーパーの白菜が、昨日より5円高い!」など、少額だと肌感覚でビンビンくるのに、ある一定額を越えると急にわからなくなる。車を買う時、「あと30万でオプションが付く」と言われると、「まあいいか」みたいなことになってしまう。さらに不動産となると、それこそ35年ローンを組んで買ったりするわけで、本来ならば白菜の何万倍も真剣に検討すべきです。

夏原 おっしゃる通りです。

大口 日本人は住宅ローンのおかげで奴隷のように働かされ、欧米人のように休みが取れず、夢も小さくなっていると言われています。そこまで人生に影響を与える買い物なのに、不動産業者の話を疑うことなく信じ、割と簡単に決断してしまうんですよね。

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