音楽編集ソフトを利用した物理実験

ここまでは授業の導入。この日の1つめの実験は、音楽ファイルからボーカルの音だけを抜き出すこと。生徒たちに配られたプリントのタイトルは「2年物理実験NO.2 波の重ね合わせと独立性~音波を例に」

3人1組で、「Audacity」というパソコン用の音楽編集アプリを使用する。いくつかの種類の楽曲のそれぞれについて、ボーカル入りの音源とカラオケ用の音源の2種類が授業用のクラウドにあげられており、好きな音楽ファイルをダウンロードできるようになっている。それらを「実験材料」として使用する。童謡からJ-POP、洋楽まで幅広い。「Audacity」でそれらを再生すると、音の波形が表示される。

「ここに音響効果を加えるエフェクトのメニューがあるから、ここにあるものをいろいろ試してみて、ボーカルだけを抜き出してみてください。はい。始めてください」と今和泉さん。何をどうするのかという作業の説明は一切ないが、生徒たちは「Audacity」をいじり始める。てっきり何度か使ったことがあるのかと思いきや、このアプリを使うのはみんな初めてだという。

15分ほどすると成功するグループが現れる。何をどうしたのか生徒に聞いてみた。「まず、カラオケの音源の波形を反転しておいて、そこにボーカルありの音源の波形を足しました」。なるほど、実験の意味を理解できた。私が「じゃ、最近の高価なイヤホンに搭載されているノイズキャンセリング機能と同じ理屈か!」と言うと、生徒も「あっ、そういうことですね。いま認識しました!」と目を輝かせてくれた。

音楽編集ソフトで楽曲からボーカルだけを抜き出す実験

しかし曲によってはクリアなボーカルにはならないことがある。それに気づいた生徒が声を発する。「ボーカル以外の雑音は何?」「なんだろうなぁ。カラオケの音源に何か加工がされているのか、同じエフェクトをかけたとしても、ボーカルありのときとなしのときで、微妙に波形が変わってくるのかもね」と今和泉さん。試しに、カラオケの音源の波形を反転して、そこにエコーをかけておいたボーカルありの音源の波形を足すと、エコーの成分だけが残って聞こえる。

実験を終えてから、結果をプリントに記入する。プリントには「使用したエフェクト名を書こう。また、それによってどうして目的が達せられたか、簡単に説明してみよう」などと書かれている。それに答える。

2つめの実験では、L(左)とR(右)のセットになっている携帯用スピーカーを向かい合わせたときに生じる音の変化に着目する。「音の波形が、谷でも山でも音は聞こえるよね、同じように振動するスピーカーから出る音を左右からぶつければ波は打ち消しあうはずなのに、音は大きく聞こえる。これはなんで? 音が大きいというのはどういうことなの? 考えてみてください」と今和泉さんは生徒たちに問いかける。

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どんな実験結果が出るかは重要ではない
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