テレワークの達人に聞く 情報・時間管理のスゴ技10
在宅勤務、リモートワーク……というと、これまではワーキングマザーや共働き家庭の仕事と家事の両立を支援するための施策のイメージが強いかもしれない。だが、先進的な組織では、立場や年齢にかかわらず、誰もが時間と場所を選ばず、自由に働き方を選択できる環境や風土が整っている。
「うちの会社では、普段から、独身、既婚、子持ち関係なく、誰でもテレワークができています。独身である私も、定期的にテレワークをしています」というのは、大手IT企業で新規事業を担当している32歳のAさん。
「私はこれまで、好きな時に好きなように活用していましたが、新型コロナウイルスの影響で全社員がテレワークに。それでも普段と変わらず仕事ができています」
【スゴ技1】気持ちを伝えるメッセージは意識して使う
Aさんは、リモートで仕事をするとき、チームメンバーとのコミュニケーションで「気持ち」を伝えることを大事にしている。「コミュニケーションは、ビジネスチャットの『Slack(スラック)』というツールを使っています。始業や退勤時の単なる報告でも、絵文字スタンプをうまく使ったり、+αの言葉を加えたりして意思表示しています。時には、『感動して泣きそうになった』『今のは、ショックだよねぇ』と、対面で話すとき以上に相手に気持ちを伝えられるように工夫しています」
◆「業務を開始します~。在宅は仕事がはかどりますが、腰が痛くなりますね 笑」
◆「おはようございます。業務開始します!在宅、すごくいいなと感じています!」
◆「今週もお疲れさまでした。良い週末を!」
◆「退勤します、おつかれさまでした」
【スゴ技2】自分の担当分野以外にも目を配って応援
新規事業の企画という仕事柄、取引先との打ち合わせやリサーチなどで外出することが多く、他部署に比べてメンバーがどこで何をしているのか、チームが把握することが難しい部分もある、とAさん。
「だからこそ、あえて自分が担当ではないチャンネルのタイムラインを見に行って、商談が進みそうな案件の報告に積極的に絵文字スタンプを使って盛り上げたり、雑談を持ちかけたり。なるべく、職場全体で応援し合う雰囲気を作れるように心掛けています」
【スゴ技3】自主的に、テレカンミーティングをセット
Aさんの会社は、3月いっぱい、全社員が原則出社はしないテレワークに移行したが、「どうしてもチームメンバーの顔を見たくなったり、声を聞きたくなったりしている」という。そこで、「自主的に同僚とプチミーティングをセット」しているのだそう。
「ビデオ会議システム『Zoom(ズーム)』を使ったテレカン(テレフォンカンファレンス)やLINE電話を使った短い会議をしています。相互監視の効果もありますし、何より、仲間で仕事をしている感覚を取り戻せる。お互いの仕事の進捗を共有しながら、励まし合って仕事へのモチベーションを高めています」
【スゴ技4】食事の時間を必ず決める
Aさんが時間管理で大事にしているのは、「食事の時間を必ず決めること」。「朝食は8時半、昼食は13時、夕食は19時と3食の時間を必ず決めて、1日の時間配分を考えています。在宅は雑音がなくて集中できてしまう分、仕事を切り上げるのが難しくて……。食事の時間をきちんと設けることで、椅子から立ち上がって休憩をする習慣を作りたいのです」
【スゴ技5】旅行中や帰省中もテレワークを積極利用
実は、独身ならではのテレワークの活用をしているというAさん。中でも、「ひとり旅との組み合わせで時間を有効に使えてよかった」という。
「宮古島に旅行に行ったとき、初日の移動日は休暇を取得し、2日目は宮古島で完全テレワーク、3日目は仕事を休んで観光といった具合に、旅行と仕事をうまく組み合わせたこともあります。いつもと違う場所で仕事をすると、リフレッシュすることができ、仕事の効率はむしろ上がりました。今度は、語学習得のためにマレーシアに長期滞在し、そこでテレワークを活用できないか、検討しています」
◇ ◇ ◇
37歳のYさんは、スタートアップ企業への転職を機に、約1年前からテレワークを実践している。現在の仕事は人事採用業務で、週5回、平日はほぼ毎日、在宅勤務だ。
「個人で仕事を進めることが多いため、日々の業務は、Macに入っているアプリの『メモ』を使って自分でタスクを書き出し、管理しています。チームでの仕事はSlackのスレッドやZoomを活用して、チャットをしながら進めることもあります」
【スゴ技6】とにかくクイックレスポンス
「とにかく、クイックレスポンス!」を心掛けているYさん。「Slackで自分宛のメッセージが届いたときは、取り急ぎ『確認します』のスタンプを押すか、『○時ごろお返事します』と返事をしておき、メモのタスクリストに追加します。そして、取り掛かっている業務が終わり次第、すぐ対応しています」
また、「誰かが質問を投げかけているとき、自分で答えられる範囲のことはすぐ返します。これは、自分自身が困って質問した時に、瞬時に答えてもらってうれしかったからです。顔を見ずに文面だけでコミュニケーションをとっていると何かとモヤモヤすることもあるのですが、なるべく早くクリアにして共有すると、お互いにスッキリして仕事に集中できます」
【スゴ技7】翌日のタスクを可視化、30分刻みで予定表を作成
業務量がとにかく多いため、退勤時には、翌日のタスクを可視化するようにしているというYさん。「毎朝、その日の予定を10~30分刻みで組みます。突発的な作業依頼が発生して思い通りにいかないこともあるので、余白として1時間とっておき、1日8時間勤務で終わるようにスケジューリング。また、翌日や翌週などが締め切りの急ぎではない仕事に関しては、Slackのリマインダー機能を使って、管理しています」
【スゴ技8】自分が「ご機嫌」でいることを大事にする
「同僚の中に、『了解でっす!』『ありがとうございます~』とテキストでの意思表示が常に『ご機嫌』な人がいるんです。彼女と顔を合わせて仕事をしたことがあるのは3分程度ですが、私は彼女のことをとても信頼しています。不機嫌な人って、オンラインでも仕事を頼みづらい。ご機嫌な人が一人いるだけでチームが明るくなります。だから私も、常に『ご機嫌』でいるように意識しています。どんなに険しい顔をしていても、テキストだけはせめてご機嫌でいたいです」
「実はリモートワークのほうが休む時間が少ない」とYさんは言う。「会社にいれば、アジェンダのない会議に参加して雑談していたり、ちょっと休憩に外にコーヒーを買いに出たり。デスクにいなくても『そのうち帰ってくるかな』と追及されることはないですよね。
でも、リモートワーク中に対応が遅れると、『本当にやっているの?』という気持ちも生まれやすい。だから、クイックレスポンスを意識したいし、きちんと言葉を選んでコミュニケーションする必要があると感じています。自分のご機嫌力を保ちつつ、無条件にお互いを信頼し合うことがテレワークを上手に活用するために一番大事なことではないかと思っています」
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大手メーカーに勤務するKさん(40代)も、在宅勤務歴1年。だが、「在宅勤務を始めた頃はストレスフルだった」という。
「テレワークのためのシステムの使い方や勤怠の報告の仕方などは、使っていくうちに慣れていくので問題ないのですが、とにかく座りっぱなしがストレスで……。朝起きてから始業して、歩いた歩数はわずか。どんどん動かなくなり、腰痛や肩こりなどの不調が出てきてしまったのです」
【スゴ技9】1時間に1回の息抜きメニューを作る
そこでKさんは、1時間に1回の息抜きをするためのメニューを作ることにした。「『お茶を入れるために立つ』『筋トレをする』『窓を開ける』『トイレに行く』『背伸びをする』など、1時間に1回、小さなことでも、仕事とは関係のない動きを入れるように心掛けています」
【スゴ技10】習い事に通って体を動かす
さらに、Kさんは運動不足を解消するために習い事に通い始めたという。「ヨガに通い、汗を流す時間を設けることにしています。在宅勤務なので、自宅の近くのジムに通うことができ、移動時間も短縮できます。自由な時間ができた分、いろいろなスポーツを楽しめるようになりました。おかげで、『今日は○時からヨガだから、△△までに終わらせよう』と仕事の効率も上がり、モチベーションも高まりました」
(取材・文 長野洋子=日経doors編集部)
[日経doors 2020年3月17日付の掲載記事を基に再構成]
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