インドのOYO、新ブランドは「旅館」 AIで訪日客

日経クロストレンド

OYO Hotels Japanの新ブランド「OYO Ryokan」の外観イメージ
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OYO(オヨ)ホテルズジャパン(東京・千代田)が3月、新ブランド「OYO Ryokan」を発表した。同社の母体であるインドの新興ホテル運営会社OYOホテルズアンドホームズは、世界80カ国に100万室以上を保有し、人工知能(AI)などのテクノロジーを使って効率的に収益化する仕組みを導入していることで知られるホテルチェーンだ。企業理念は「世界一信頼されるホテルブランドになること」で、創業6年で世界第2位のホテルチェーンとなった。日本では2019年4月にソフトバンクとの合弁会社として本格的に事業を始動。20年3月現在、全国45都道府県80都市の施設とフランチャイズ契約をしている。

日本の旅館に持ち前のテクノロジーを導入

OYOホテルズジャパンによると日本国内の旅館市場はこの20年間で約40%縮小したという。一方、ホテル市場は20年間で約20%ほど伸びた。日本人のライフスタイルの変化や、少子化による後継者不足などが影響し、ホスピタリティー業界の市場のバランスが崩れ始めた。また老舗旅館にはWi-Fi(無線LAN)環境が整備されていないなど、ネットワークの問題もあるという。

こうした流れを踏まえ、OYO Ryokanでは和室や温泉といった本来の旅館の姿はそのままに、宿泊予約や収益管理、ネットワーク環境に対し、OYOが持つテクノロジーを導入していくという。既に展開しているOYOホテルと同様に、AI技術を駆使しながら割安な宿泊料金で稼働率を上げ、収益性を高めていく考えだ。

客室や大浴場など、施設のリフォームなどもサポートする。フルブランディングする施設もあれば、リフォームなしで始める所もあり、旅館によってサポート態勢は異なるという。あくまで施設の雰囲気やオリジナリティーを尊重する考えだ。

OYO Ryokanの客室イメージ

外国人旅行客が居心地よく過ごせるように、室内は座椅子をなくし、布団を組み合わせてソファとしても機能するソファベッドを導入する。また体の大きい人でも座りやすいように、大浴場の椅子は従来よりも少し高めのものを用意するという。これについてOYOホテルズジャパンのサント・シング副社長は「海外からの旅行者は非常に多くの荷物や機材を持っている。そこで旅館内は高い機能性を装備すべきだと考えた。外国人が畳の上で長時間過ごすのは簡単なことではない。そんな中で、旅行者が落ち着いて過ごしてもらえるような空間づくりに努めている」と説明した。

客室アイテムのモックアップ。右側に置いてあるのが、布団を組み合わせて作られたソファベッドのプロトタイプ

徹底的に「和」にこだわったブランド作り

OYO Ryokanは「市場調査」「旅館への理解」「デザイン会社とのコラボレーション」「市場からの受け入れ」という4つのプロセスを経て、今回の事業説明会を迎えた。「旅館への理解」をより深めるために、スタッフは全国25以上の都道府県にわたり、100以上の物件を訪れたという。そこで「旅館ではどのような食事が提供されているのか」「どのような接客・配慮がなされているのか」などを学んだという。その上でブランドのコンセプトとして掲げたのは、江戸時代より続く日本の文化である「女将」の存在。女将のホスピタリティー、粋、伝統というものに注力しながらOYO Ryokanのブランドをつくり上げてきたという。

OYO Ryokanが提供する「屋台バー」。宿泊客が日本の伝統的な暮らしを体験できるような空間を演出。地酒など地域に根ざした商品を展示し、購入もできる

ブランドコンセプトが完成するまでの6カ月間は、デザイン面のコンセプトも徹底的に練り上げた。その結果、ブランドの象徴でもあるOYO Ryokanのロゴは日本の伝統装飾「水引」をモチーフにした。イメージカラーには、江戸時代は身分の高い者だけが使用できた「梅鼠(うめねずみ)」を選び、日本刀から着想を得た専用フォントも作った。外国人観光客を想定し、徹底的に「和」にこだわりながらブランディングを進めた。

19年10月から本格的に事業を開始させ、現在、26県約1000室以上と契約しているOYO Ryokan。当面の目標は全ての都道府県にOYO Ryokanを作っていくことだという。また、今後もさまざまなブランド品を旅館に対し無償で提供し、提携したオーナーとの信頼関係を強化していく。

浴室の入り口。のれんに「水引」をモチーフにしたロゴマーク。色はイメージカラーの「梅鼠(うめねずみ)」を使用

新型コロナウイルス、影響はあるが戦略変更はしない

さて、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ホスピタリティー産業だけではなく、さまざまな業界が痛手を負っている。全国の宿泊事業者は、客室稼働率の大幅な減少に頭を悩ましている状況だ。これはOYO Ryokanにとっても想定外だったはず。しかし同社が強調するのは、このビジネスを長期にわたって続けていくということ。事態が収束したときに顧客が戻ってくるよう、今できることに最善を尽くすという。

また、この緊急事態に直面する日本全国の加盟ホテルを支援するため「OYO パートナー・サポート・プログラム」を発表した。これについて同社オペレーティング・パートナーのプラスン・チョードリー氏は「大きく戦略をシフトすることは考えていない。この数カ月、経営においては厳しい局面が続くだろう。財政的に厳しい状況だというアセットオーナーに対しては、19年の売り上げと照らし合わせながら支援していく」と話す。

(ライター 中山洋平)

[日経クロストレンド 2020年4月1日の記事を再構成]

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