テレワークの達人に聞く スゴ技10、イヤホンは3種類
緊急事態宣言が発令され、新型コロナウイルス感染防止でテレワークが緊急導入されている今だからこそ、本気の働き方改革を実践してみよう。リモートワークや在宅勤務がうまくいくコツをみんなで共有し、一つひとつ実践してみてはどうだろう。そこでテレワークの達人たちに、仕事の生産性を上げるコツを聞いた。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、全国的にテレワークが推奨される中、「うちの会社では突貫工事のように導入して、現場は混乱」(保険業、30代)「数年前から制度としてあったが、私のいる部署では上手に運用された前例がなく、みんな慌てている」(サービス業、30代)といった困惑の声も聞こえる。一方で、「日常的にテレワークを実践していたので、こんな非常時でも仕事は平常通り」と全く影響がないという人も。今、企業間で、個人間で、テレワークによる働き方や生産性に大きな差が出始めている。
「顔を合わせずに上手にコミュニケーションを取る方法は?」「他者の視線を感じない中で、どうやって自分のタスクや働き方をマネジメントしているの?」――テレワークを1年以上続けている達人たちに、テレワークで仕事の生産性を上げるコツを聞いた。達人の仕事術には、報告・連絡・相談の方法、時間マネジメントの工夫、コミュニケーションツールの使い方まで、今すぐ使えるTIPSが満載だ。ぜひ、参考にしてほしい。
Nさん(30代)が勤めるIT企業では、4年前に全社的に在宅勤務を含むテレワークが導入された。Nさん自身は、在宅勤務歴2年。「今回の新型コロナウイルス感染防止で、会社からテレワーク推奨のアナウンスは特にありませんね。恐らく、導入して数年もたつのであえて伝えるほどのことではないという判断なのだと思います。私自身は、通常通り在宅勤務をしながら仕事をしています」
Nさんの仕事は、プロダクトやサービスをデザインしたり、プロジェクトを管理したりする仕事だ。週3~4回は在宅勤務で働く。これまで試行錯誤しながら、自分が仕事を進めやすい環境を整備し、効率よく仕事を回す方法を身に付けてきた。特に心掛けているのは、自分がどういう状態かこまめに職場の人とシェアをすることだ。
【スゴ技1】ステータスをこまめに報告する
職場で使っているツールはビジネスチャットツール「Teams(チームス)」。プロジェクトの進捗管理や資料管理、チャットもできるシステムだ。Nさんは毎朝身支度をした後、Teamsを立ち上げて、「今から始めます!」とチーム全体に報告する。プロジェクトごとのタイムラインには「今日の作業内容は○○と△△の予定です」と当日のタスクも共有。
「お昼ご飯を食べる時間には『これからお昼のため、○時まで中抜けします』、業務を終了するときには『今日はここで業務を終了します』と伝えています。目が届く場所で仕事をしているわけではないので、テレワークにはお互いの信頼関係が必要だと思うんです。チームメンバーや上司から、『あの人はちゃんと仕事をしてくれる』ときちんと信頼してもらえるように、できる限り自分の状況はこまめに報告しています」
【スゴ技2】メッセージはだらだらやり取りしない
仕事中は、常にいくつものプロジェクトのタイムラインが立ち上がっており、いつでも話しかけたり、話しかけられたりできる状態にしている。「ちょっとしたことも気軽に聞けるチャットツールは便利ですが、使い始めるとだらだらメッセージを続けてしまいがち。例えば問題点についてやり取りをし、解決したと思ったら、『ありがとうございます。一旦これで進めます』と自分からクローズさせることを意識しています」
【スゴ技3】電話応対のイヤホンは3種そろえる
コミュニケーションはチャットだけがすべてではない。「チャットよりもサクッと電話したほうが早いなと思うときは、すぐ電話します。また、相手によっては、スカイプなどを使ってパソコンで電話してくる人もいれば、スマホにかけてくる人もいる。パソコンとスマホでは、イヤホンジャックの種類が違うので、3種類を常備。いずれも差したままにしておき、かかってきた瞬間に耳につないですぐに対応し、タイムロスをなくすようにしています」
【スゴ技4】付せんでタスクを見える化
毎日、複数のプロジェクトの仕事を進め、いろいろなチームとやり取りする中でタスクを管理するのは大変だ。「小さな作業のTO DOも漏らさないように、付せんにタスクを書き込み、見える化を図っています。横軸はクライアントやプロジェクト別、縦軸にタスク。優先順位の高い順に並べて、作業が終わったら処分します」
「小さなタスクが多いとすぐ忘れてしまうので、とりあえず書き出してから一旦忘れるようにしています」
【スゴ技5】時にはリモートで飲み会にも参加
Nさんは小学生の子どもがいるため、職場の飲み会に参加できないこともしばしば。だが、飲み会にリモートで参加することもあるという。「先日(新型コロナが猛威を振るう前)は、職場の焼き肉会にテレカン(テレカンファレンス)で参加しました。店員に集合写真を撮ってもらいましたが、私だけ同僚のスマホスタンドの中(笑)。一緒に乾杯したり、飲み会の様子を数十分共有したりするだけですが、その場に行けない私にとっては、貴重な時間になります」
ただ、緊急事態宣言が発令された今は、全員がリモートの飲み会になりそうだ。
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Hさん(40代)は、大手外資メーカーで研究開発の仕事をしている。年俸制のため、コアタイムを10時~16時と設けてはいるものの、「あくまで個人の裁量で仕事を進めているため、1カ月単位で、納期や勤務時間を調整でき、成果を出していれば、ある程度の自由出勤が認められています」
外資ということもあって、チームは多国籍。アジアや欧米のいろいろな国のメンバーでチームを編成し、仕事を進める。時には、やり取りは国をまたいで本社のある米国と会議をすることもある。
【スゴ技6】大量メールは送信者や自分宛てかで重要度を選別
物理的に顔を合わせて仕事ができないため、1日に受け取るメールの数は大量だ。「1日1000件以上のメールを裁かなくてはならないのですが、全てに目を通すのは現実的ではないんですよね。そこで、そのメールの宛先が、メンバー全員なのか私なのか、送信者が返信必須のプロジェクトの重要人物なのか、上司なのかを見極めるために、フィルタリングを自分で設定して処理しています」
【スゴ技7】メールタイトルはキャッチーにする
また、Hさんは多国籍のメンバーと英語でやり取りをしているからこそ、仕事の効率を上げるために、メールで心がけていることがあるという。
「日本のメンバーは、『○○の件』というざっくりしたタイトルで、メール本文では、定型のあいさつ文や進捗がうまくいかない言い訳から入ることが多いんです。でも、英語を使う外国人メンバーは、タイトルには『〇〇のリポートに△△の補足を!』などといった要件を明確に書き、進捗やお願いの共有はいたってシンプル。つい、長くなってしまうのは、相手への配慮などが得意な日本人ならではなのですが、仕事が立て込んでいるときに、メールの情報が過多になると無駄に時間がかかってしまう。大量のメールの中できちんと読んでもらい、読む時間を短縮化して、その分きちんと作業を進めるために、不要な情報をできる限り省くように努めています」
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Oさん(30代)は、外資の製薬会社でシステム整備の仕事をしている。会社でテレワークが導入されたのは約10年前、今や、海外のスタッフはほぼ在宅勤務で仕事をし、日本の社員も申請をすれば誰でもいつでもテレワークができる環境だ。
「新型コロナウイルス感染防止もあって、日本オフィスの在宅勤務率は上がりました。私もそれまでは週2回、在宅で仕事をしていましたが、今は一時的に、在宅を基本にして、用があれば出社するというスタイルに切り替えています」
【スゴ技8】顔が見たいときは迷わず出社する(※非常事態宣言の期間が終わったら)
申請次第で100%在宅勤務の働き方も選べるが、Oさんは時々出社できるようにしたいという。なぜなら、「たまにはチームメンバーの顔を見たくなるから」
「今はチームで週に1回、みんなで出社する日を決めています。それでも日々のやり取りでちょっとメンバーの顔が見たいなと思うときは、出社しています。在宅も出社も、効率を上げるために選択しているだけなので、出社したほうがスムーズに進みそうだなと判断したときは迷わず出社しています」
新型コロナで非常事態宣言が出ているこの時期は難しいが、宣言が終了したらこうした行動も再開することになりそうだ。
【スゴ技9】自分の中で定時を決める
Oさんが在宅勤務を実践する中で一番の課題は、「エンドレスに仕事をし過ぎてしまうところ」だという。
「始めたころは、話しかけてくる人がいないので集中し過ぎてしまって、休憩も取らずにひたすら座りっぱなし。しかも、在宅勤務のほうが残業時間も長くなってしまったんです」。そこでOさんが始めたのが、「自分で定時を決めること」。
Oさんは定時を17時半に設定している。朝6時から家族が起きてくる7時までは仕事のメールをチェックし、洗濯や食事などの家事を済ませて、9時半に始業。17時半まで、お昼休憩をはさんで集中する。「定時を過ぎたら、なるべく翌日のタスクにして切り上げます」
【スゴ技10】仕事場は植物とアロマでリラックス
それでもつい、仕事に没頭し過ぎてしまうため、自宅で仕事をする環境をリラックスできる場所に整えたという。
「自分の好きな香りのお香やアロマをたいて、少しでも気分が安らぐようにしています。会社だと他の人もいるので、香りを楽しみながら仕事をするのは難しいですよね。デスクには植物を置いて、自分が落ち着ける場所にしています」
(取材・文 長野洋子=日経doors編集部)
[日経doors 2020年3月13日付の掲載記事を基に再構成]
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