在宅勤務は「残業代なし」いいの? 難しい時間で管理比嘉邦彦東京工業大学環境・社会理工学院教授(上)

1988年に米アリゾナ大学で博士課程修了。同大学講師、ジョージア工科大学助教授などを経て96年に東京工業大学 経営工学専攻助教授に、99年より現職。テレワーク・クラウドソーシングをメインテーマとした情報システム、組織改革などについて研究している。
1988年に米アリゾナ大学で博士課程修了。同大学講師、ジョージア工科大学助教授などを経て96年に東京工業大学 経営工学専攻助教授に、99年より現職。テレワーク・クラウドソーシングをメインテーマとした情報システム、組織改革などについて研究している。

新型コロナウイルスの問題に直面し、多くの社員が初めてテレワークをせざるを得なくなった企業が相次いだ。企業はどんな課題に直面しているのか。問題が収束した後にこの経験をどう生かしていけばいいのか。「テレワーク」研究の第一人者である東京工業大学環境・社会理工学院の比嘉邦彦教授に聞いた。

少なくないネガティブな反応

白河桃子さん(以下敬称略) 新型コロナウイルス(以下コロナ)の影響で、企業が一斉にテレワークに対応する流れが加速し、3週間ほどが経過しました(3月下旬の取材時点)。日本のテレワーク導入に早期から関わってきた比嘉先生が、今の状況をどう見ていらっしゃるか。また、今すぐ手を着けるべき課題はなんなのか。ぜひ伺わせてください。

比嘉邦彦教授(以下敬称略) いろいろな声がすでに聞こえてきていますね。一つは、「やってみたら、案外できた」という声。日本企業でテレワークがなかなか進まなかった理由が「中間管理職の拒否反応」だったんですね。制度もできて、会社としても推奨していると言われるけれど、現場を取り仕切る上司がなかなか重い腰を上げない。それが今回のコロナ対策として、在宅勤務に本格的に取り組んでみると、「悪くない」という認識が芽生えて、一気にチーム全体に浸透したという。

一方で、ネガティブな反応も少なくありません。準備不足ゆえの不便があちこちで生じているようです。

白河桃子さん

白河 テレワークは食わず嫌いの人が多いのですが「やってみるとよかった」だけではなく、ネガティブな感情が芽生えてしまった人もいるんですね。

比嘉 自宅で仕事ができる環境を整えないまま在宅勤務に踏み切った場合、例えば、業務に必要な書類が電子化されていなかったり、電子化されていても社外からアクセスできなかったり。結果、ほとんど仕事が進まなくて「実質的な自宅待機だ」と嘆く人も。

これが長期化した場合、予想されるのは、なんとか仕事を進めたいワーカーが独自の工夫を始めることです。結果的に、データの外部持ち出しなどのセキュリティーリスクを高めることになるのではと危惧しています。ですから、会社側も今どのような不具合が起きているのか、本気で情報収集をして早急に分析・対処をしていくことが急務です。

白河 同感です。数週間が過ぎた段階で、データ収集をして課題と対策の発見につなげるべきですよね。ほかには、どんな声が聞こえてきていますか?

比嘉 家庭内のトラブルもよく聞かれますね。毎日出社している人が急に在宅勤務になったときに、まず奥さんが「お昼ご飯を余計に作らないといけない」とストレスがたまる。「家にいるんだから子守をしてよ」と言われて、在宅勤務のはずなのに「勤務」にならないというパターンも見られます。

これは数十年前に実証実験をやったときにも同じ問題が出てきて、要は在宅勤務に対する家庭の理解が浸透していない。某大手メーカーが在宅勤務制度を全社員向けに導入するにあたって、社長名で家族向けに「家にいても仕事をしていますので何卒ご協力ください」と理解を促す手紙を書いたと聞いたことがあります。それくらいのメッセージが必要なのかもしれません。

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