在宅勤務は「残業代なし」いいの? 難しい時間で管理比嘉邦彦東京工業大学環境・社会理工学院教授(上)

比嘉教授は4省合同で作成した企業へのテレワーク導入ガイドブックの編集委員長を含め、テレワーク関係省庁の各種委員会の委員および委員長を歴任。日本テレワーク学会の特別顧問、日本テレワーク協会のアドバイザーである

在宅勤務は「成果」で評価を

白河 リモートといっても在宅の場合、仕事と家庭のコンフリクト(対立)が起きる。リクルートの調査によると、在宅勤務を導入した場合、男性の家事時間は1日あたり平均31分ほど増えたそうです。自宅にいることで保育園のお迎えを担当しやすくなり、その流れで夕食から寝かしつけまでの育児や家事に関わるようになるのだとか。これは良い傾向だなと感じたのですが、一方で、「夫が外で働き、妻は家を守る」という昭和型役割分担が明確な家庭の場合は、男性は在宅勤務を嫌がります。なぜなら、「昼間の家は妻の城」ですので、非常になじみにくい。

この背景をよく理解している企業は、自宅以外の職場としてサテライトオフィスとしてのコワーキングスペースを契約して利用を促してきたわけですが、コロナの感染予防対策となると、コワーキングスペースも人が集まる場所となり得るので推奨しづらい。やはり在宅推奨となるわけです。共働き家庭においても、「夫婦2人で机を並べて仕事するのはやりづらい」という戸惑いも聞こえてきます。つまり、今、私たちは「家庭における、仕事と家庭の両立」という問題に社会全体で初めて直面しているんですね。

比嘉 特に首都圏で働く人たちは、誰もがそんなに広い家に住んでいるわけじゃない。小さな子どもがいる場合は、なおさら集中力を保つのが難しくなるでしょうね。私も昔、娘が2歳くらいの頃に在宅勤務を試みたときは、さんざんキーボードを触られましたよ(笑)。個人の事情に応じて集中できる仕事の仕方やメリハリの工夫ができる仕組みづくりが重要だと思います。このときに課題となるのが、評価の手法です。労働時間ではなく「成果」で評価する手法への転換が早急に求められています。

白河 おっしゃるとおりです。働き方改革の長時間労働是正はある程度進んできたのですが、依然として問題だったのが「効率よく早く仕事を終えた人ほど、残業代をもらえなくて収入が減る」という矛盾でした。残業削減とセットで進めるべきなのは「評価と報酬の再設計」だと私は考えてきましたが、テレワーク推進においても同じことが言えるということなのですね。

比嘉 同じだと思います。多くの企業が一斉にテレワークを実施して同じ課題にぶつかっている今こそ、評価法の改革も試行してみるべきではないでしょうか。重要なのは、「タスクのチケット化」という概念です。一つのタスクにどんなスキルと人数、時間が必要かを定義していき、そのタスクを完成させられるスキルを持つワーカーにアサインしていく。約束したアウトプットの質と納期さえ守ればよしというマネジメント法へと切り替えていけばいいんです。

白河 すると、「1日のいつ働くか、何時間働けばいいか」に縛られなくなりますね。

比嘉 はい。保育園の送り迎えとの時間調整も自由になり、ワーカーそれぞれの事情に合わせてスケジュールを立てられるようになる。出社を前提とした働き方と同様に、「○時から△時まで働いてください」と管理しようとすると、いろいろと不都合が生じます。

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