免疫を持っている人は「感染を広げない不発弾」だと話すのは、インフルエンザに対する免疫を研究している米シカゴ大学のケイティー・ゴスティック氏だ。ウイルスが人から人に感染しなくなれば、流行は徐々に沈静化し終息すると氏は説明する。

「白か黒か」の集団免疫

集団免疫が獲得されるには、集団の中で感染症の免疫を持つ人の割合が必ず一定のレベルを超える必要があると、米ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院の疫学者ヨナタン・グラッド氏は話す。少しばかり集団免疫が獲得されるということはない、つまり、白か黒かのどちらかしかない。

1人の感染者が新たに感染させる人の数が平均1人未満になった時点で初めて、その集団は集団免疫を獲得したということになる。感染が全くなくなるわけではないが、拡大を防げるということだ。

集団免疫に関する知見の多くは、感染力が非常に強い麻疹(はしか)から得られている。感染力が強いほど、集団免疫を達成するためには多くの免疫獲得者が必要になる。例えば麻疹の免疫を持たない集団に感染者が1人いる場合、18人もの人に感染が広がってしまう。この数を1人未満に下げるためには、集団のほとんどが免疫を獲得し、感染者と次の感染候補者との間で盾となる必要がある。麻疹の場合、集団免疫を達成するには95%もの人が免疫を獲得する必要がある。

これまでの研究によると、新型コロナウイルスの感染力は麻疹よりも弱く、感染者が新たに感染させる人数は平均2~3人とされている。この場合、集団免疫を達成できる免疫獲得者の割合は人口のおよそ60%だ。

集団免疫を安全に獲得するには

ワクチンは、体に一度も感染症と戦わせることなく、その病原体専用の武器を作ってくれる。そのため、一般的に集団免疫を目指す場合は、感染ではなくワクチンを使って行われる。例えば米国では、麻疹感染例のうち約30%は、けいれん、肺炎、脳炎等の合併症を引き起こし、1000人中2人が死亡に至る。全人口を麻疹にさらし、生存者に集団免疫を獲得させるというのは危険なやり方だ。

しかし、感染によって集団免疫が獲得されることもないわけではない。悪名高い「水ぼうそうパーティー」は、大人よりも子どものほうが軽症で済むことの多い水ぼうそうに、一部の親が自分の子どもをあえて感染させようとする方法だ。

「新型コロナウイルスの場合に問題なのは、年齢にかかわらず誰も感染したことがない点です」と、ゴスティック氏は話す。まるで水ぼうそうがこの世に初めて登場し、より重症となるリスクに大人がさらされているようなものだと、氏は説明する。

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新型コロナの集団免疫、本当に獲得できる?
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