「間違いだらけの」経営改革 企業を壊す100の誤解『経営改革大全』

企業は外から統制できるか

実際に項目の一つを見てみましょう。第5項目の「外付けのガバナンス(統治)から内なるガバナンス(自治)へ」では、コーポレートガバナンスの概念についての通説が次のように書かれています。要点をまとめます。

・コープレートガバナンスの訳語は「企業統治」で、企業を統制する仕組みのことである。
・企業を自律(じりつ)経営に委ねておくと、利益至上主義に走ったり非効率なマネジメントなどを放置しかねない。だから外部からしっかり監視する必要がある。
・一方で経営の本当の中身は内部者しか知り得ないので、「経営の透明性」を高めるためには外部にわかりやすい指標を設定するほかない。
・経営の透明性では取締役会が大きな役割を果たす。女性や外国人を加えて多様性を確保する、あるいは独立した社外取締役を加えるといった改革を通じて、取締役会の機能は強化できる。その責務も明確になる。
・取締役会がきちんと機能するようになれば、最高経営責任者(CEO)が求められた役割を十分に果たしているかどうかチェックできる。

著者は、こうした「通説」の誤りを指摘します。「そもそも統治という外付けの仕組みに頼ること自体、本質的な矛盾をはらんでいる。なぜなら、企業という有機的な組織は、内側からしか制御できないからだ」というのです。正しい理解(真説)については、次のように述べられます。

 外付けのガバナンスは、その意味で、まさに必要悪と言うべきである。目指すべき方向は、そのようなガバナンスが不要な状態を作ること、すなわち、自らを律し、自浄し続ける仕組みを、企業の内部に埋め込むことにある。その時点で、統治という外付けの仕組みに頼る必要はなくなり、自治という内部の仕組みがしっかり駆動し続けることになるはずだ。
(第1章 株主にへつらうな 33ページ)

ここで読者は「自律し、自浄しつづける仕組みとは具体的に何か」と疑問を持つかもしれません。そうしたら「ガバナンスの進化」を共通テーマに扱った64項目~69項目を参照することもできます。この部分には「64.ESGからESCへ」「65.ビジョンからパーパスへ」「69.統治(他律)から自治(自律)へ」といった見出しが並んでいます。

経営理論のトレンドを知るためには、新しいキーワードの注目して解説を読んでいくのもよいと思います。最近目にすることの増えた3つの言葉を例示してみましょう。それぞれ、その言葉の正しい理解の仕方を記した部分を抜粋します。

【プラットフォーム】 プラットフォームが重要なのではない。そのうえでいかに仲間作りができるか、すなわちエコシステムの構築こそが、鍵を握るのである《31.プラットフォームからエコシステムへ》

【プロフェッショナル経営者】 非連続な変化の時代を迎えて、真の「経営のプロ」を内部で育成できるかどうか。そのような自己組織力こそが、企業の生命力の試金石となる《62. プロフェッショナル(外部)経営者から現場(内部)経営者へ》

【コーチング】 一方的なメンタリングでも、逆(リバース)メンタリングでもなく、レシプロカルラーニング(相互学習)。それが現状維持でも現状破壊(ディスラプション)でもなく、着実に進化し続ける組織が身につけるべき学習能力である《94.コーチングから相互学習へ》

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