変人と呼ばれてもいい 人生に余計なことする暇はない20代へ80代から伝言(1) 細川護熙氏

すぐに価値のなくなるものに貴重な時間を費やすな

細川 でもね、これは最近よく思うんですけど、人生はやっぱりそれほど長くない。100年といったって、大した長さではないんです。だから、できるだけ若いときに目標を定めて、それに向かって進んでいくことが大事だと思いますよ。

西 人生は長くない、ですか。まだ21歳の自分には想像がつきません。

細川 中国の詩人、陶淵明は「人生は幻化に似てついにまさに空無に帰すべし」とうたっています。人生は幻の花のようで、あっという間に過ぎ去ってしまうよという意味ですが、私はほんとうにその通りだと思う。ですから、余計なことはしないこと。目標を限定的に定めるのがすごく大事で、そこへ向かって最短距離で進んでいかないと時間が足りない。

私はできるだけ余計なことをしないんです。若いころは父に猛反対されても押し切って政治家になった。引退後は芸術に一直線です。だから変人だと言われますが、そのくらい徹底していかないと、自分が満足するような結果にはならないんじゃないかと思います。

西 細川さんは古典からいろいろ学んでいらっしゃるのですね。

細川 それも余計なことをしないという話につながっています。古典を読むということは、評価が定まった人たちの生き方を知るということです。歴史に名を残すような人たちが考え抜いて書き残してきた書物ですから、若い方々にもぜひ古典を読んでもらいたいと思うのです。世の中、面白いものはたくさんあります。きっと著名な文学賞を受賞するような作品も面白いのでしょう。でも、そういうのを読み出したらきりがない。人生が足りません。1週間や1か月で価値のなくなるようなものに時間をとられることは、時間の無駄です。

西 人生が足りない!

細川 ギリシャの哲学者、プラトンは面白いことを言っています。人間には3種類ある。1つ目は死んでいるもの。2つ目は死んではいないが、ただ生きているだけのもの。そして3つ目は海に向かって旅立つもの。大部分の人は2つ目の死んではいないがただ生きているだけにあたるのでしょう。でも、やはり若い皆さんには3番目の海に向かって旅立つ人になってほしい。

海とは希望、理想、ロマンです。ただ無目的にアクティブに生きるだけでは意味がないんです。自分のロマンをもって、ロマンに殉じる気持ちがあるか。それがあれば、自分なりに満足した人生をおくり、満足して死ねるんだろうと思います。

西 細川さんは海にこぎ出したんですか?

細川 目標を定めて、やりたいことをやってきたということでしょうね。人がどう思ってもかまわない。いま手掛けているアート作品だって、名を残したくて作っているわけではない。評価していただけるならうれしいだろうけど。作ることが楽しくてやっています。勲章だっていらないし、桜を見る会にも行きません。首相の時は仕方なく行きましたけど。やりたいことをやってきた人生、なかなかよかったんじゃないかな。

対談後、二人にメッセージをはがきで贈りあってもらいました(了承を得て掲載しております)

(文・構成 藤原仁美)

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