『金曜日のソロたちへ』 カメラで一人暮らしのぞき見

ビジュアル系バンドマンやマジシャン、芸妓(げいこ)……。帰宅してから寝るまでの一晩、様々な若者たちの一人暮らしを定点カメラで撮影し、無防備な姿を観察するバラエティーが『金曜日のソロたちへ』(NHK総合)だ。

『金曜日のソロたちへ』 設置する定点カメラは、多いときで10台ほど。30分番組だが4画面分編集するため、2時間近い特番を作るのと同じくらいの労力がかかるという(金曜23時50分/NHK総合)

布団のそばに必要なものを全部置いてダラダラしたり、テレビを見て独り言を言ったりと、生活感にあふれた姿に共感を覚える。撮影されている当事者が、食事のこだわりや至福の時間を自撮りで説明するコーナーがあり、配信で増加中の日常を映した“モーニング&ナイトルーティン動画”と似た雰囲気もある。

同番組は2019年5月の特番放送後、10月からレギュラー化された。ディレクターの三井広樹氏は「若い人たちに見てもらえる番組を開発するという課題があるなかで、企画が立ち上がりました」と話す。「事前の調査で大学生くらいの人たちに話を聞いた時に『芸能人が洗濯機を回している姿が見たい』という声があったんです。自分とは遠い世界の人もみんな同じことをやっているという“オフの部分”に興味があるんだと分かって。そこから発想しました」(三井氏、以下同)。

毎回3人のソロ生活が登場する。最大の特徴は、4分割の画面でずっと進行するところ。「一人暮らしって積極的にはオープンにしないし、本人は気付かないけれど、他人から見ると変わっていることもある。同じ夜の過ごし方でも、人によって全然違う“多様性”を表現したいと思って、このスタイルにしました。ザッピングする感覚で、好きな画面を見てもらえれば」

MCのNONSTYLEの井上裕介(写真右)と、エッセイストの能町みね子

1画面は94年から続くEテレのキャラクター、ストレッチマンの定位置で、一人暮らしの“あるある”ネタや、役立つ情報、ストレッチを紹介している。「メリハリをつけたかったのと、こちらからプレゼンできる1枠があるといいなということで。20~30代の方からは『久しぶりに見た』という感じで反応していただけています」

MCはNONSTYLEの井上裕介とエッセイストの能町みね子。一人暮らし歴20年である上、ツッコミの上手な井上と客観的な目線で語れる能町のコンビは目の付けどころが鋭く、VTRの楽しみ方のガイドになっている。「視聴者と同じ4分割画面で見てもらっています。お2人ともこの画面に慣れてきて、僕らが気にしなかったところでもユニークなポイントを発見してくれます」

こだわりは、制作側の「ここを見てほしい」という意図を排除していること。「スタッフがカメラを動かすことはないですし、ご本人が見せたいものだったり、普段通りの姿をそのまま伝えることを意識しています」

手掛けているのは、訳ありの人たちの赤裸々なトークをぬいぐるみで展開する「ねほりんぱほりん」(Eテレ)のチーム。人間の面白さに焦点を当てるところは共通する。エンドテロップの「みんな違ってそれがいい」というメッセージを、今後も打ち出して制作していくとのことだ。

(日経エンタテインメント!3月号の記事を再構成 文/内藤悦子)

[日経MJ2020年3月13日付]