意表つくデザイン「真珠=定番」の殻破る TASAKIニッポン発ラグジュアリー(3)

クリエーティブ・ディレクターのプラバル・グルン氏の2020春コレクション。TASAKIのモダンなハイジュエリーをまとった男性モデルが登場(c)LECCA
クリエーティブ・ディレクターのプラバル・グルン氏の2020春コレクション。TASAKIのモダンなハイジュエリーをまとった男性モデルが登場(c)LECCA
「ラグジュアリー」という言葉から連想されるブランドとは。エルメス、シャネル、アルマーニ、ブリオーニ――。それは欧州に集中する。歴史や高度な技術に裏打ちされた最高無比の品質、所有者に夢を与える美しさと心地よさ。そうした条件を備える作り手と創造物が「ラグジュアリーブランド」を公言する。では、日本に同様のブランドを生み出す素地はないのか。そんなことはない。洗練された美意識、精緻なモノづくりの技術、時代を超えて人々を魅了する素材。この国にはあまたの条件がそろう。そして今、まさに「ニッポン発ラグジュアリー」創造への挑戦が始まっている。



金色のソリッドなバーの上に、白い真珠の粒が整然と並ぶ。中指にはめれば、その真珠の列が人さし指から薬指の指元をキリリと結ぶ。ニューヨーク在住のデザイナー、タクーン・パニクガル氏によるTASAKIの指輪「バランス シグネチャー リング」は、これまでのパールジュエリーではあまり見られなかったシャープで斬新なデザインゆえに、発売されるやファッションに敏感な人々の話題をさらい、若い世代の注目も集めた。

タクーン・パニクガル氏の初コレクション「バランス」シリーズがTASAKIがグローバルに注目されるきっかけを作った(バランス シグネチャー リング、33万円)
「バランス」シリーズのピアス。パールを直線に並べた革新的なデザイン(バランス プラス ピアス、24万2000円)

「真珠といえば1連のネックレス」イメージ覆す

老舗の真珠会社がアバンギャルドなジュエリーのシリーズを発表したのは2010年。日本人の間に根強い「真珠といえば1連のネックレス」という保守的なイメージを覆し、その後、「バランス」シリーズを模倣したデザインの品々が市場にあふれた。そしてこのリングは業界に強烈なインパクトを与えただけでなく、経営危機に陥っていたTASAKIの知名度回復に大きく貢献し、グローバルブランドへの扉を開いた立役者ともなった。

神戸市で1954年に創業した田崎真珠(現TASAKI)は日本を代表する真珠ブランドとしてミキモトと並び称されてきた。長崎や佐賀に真珠養殖場を持ち、地場産業を担う小規模生産者と長年、生産・加工に取り組んできた。

ところが2008年のリーマン・ショックで市場の様相が一変した。中国から安価な淡水真珠が流入して高級品が低迷。田崎真珠は在庫処分のためにセールを繰り返したことでブランド価値が損なわれ、顧客が離れてしまった。過剰在庫を抱えて資金繰りが急激に悪化。投資ファンドMBKパートナーズの子会社となって再建を目指すこととなったのだ。

ブランド再生に向けて09年に刷新された経営メンバーには、グッチやフェンディ、ディオールなどのブランディングに取り組んできた田島寿一社長を筆頭に、外資系ラグジュアリーブランドでキャリアを積んだ顔ぶれがそろった。復活に必要なのは若い世代の顧客獲得と海外展開の強化。「世界に通用するグローバルラグジュアリーブランド」に目標を定めた同社は大胆なブランディングに乗り出した。ブランド名をTASAKIに変更し、10年に予定していた銀座店の全面改装オープンに合わせてアイコンとなる商品を考えた。

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