メリハリつけるフィンランド流 働き方の原点は小学校『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』 堀内都喜子氏

休み時間にロックアウト

時間で区切ってスイッチを切り替えるような行動パターンは幼い頃から身についている。たとえば、フィンランドでは小学校の休み時間になると、教室に鍵をかけてしまう。生徒全員を教室の外に追い出してしまうのだ。休み時間は外の空気を吸うものという考え方を、「教室からのロックアウト」という形で明確に示している。「ドライに割り切るのがフィンランド人は上手。時刻に沿っての行動は自然になじんでいる」と、堀内氏はみる。「終わったら早く帰る」というルールは学校でも定着しているので、授業が終わればまっすぐ帰る。地方の中高生はバス通学も多く、そもそもバスの時刻を過ぎれば帰宅の手立てがなくなる。

「休まないと働けない」という意識はフィンランド社会で共有されている。首相も年に4週間は休む。「休むことへの罪悪感はない。次につながる、必要な時間・行為と、誰もが理解している」(堀内氏)。互いに気兼ねなく休めるよう、自分の不在時にカバーしてくれるパートナー・同僚の存在を普段からはっきり意識している。交代でカバーするからには、代理者に権限も委ねる。「一人で仕事を抱え込まず、チーム・同僚とカバーし合うことは、業務のサステナブル化にも役立つ。業務を特定個人に固定しない仕組みはしなやかなビジネス組織づくりにつながる」と、堀内氏は休み確保以外の効果も説く。

フィンランドの人口は約550万人で、兵庫県に近い。600万人を超える千葉県には及ばない。それでもノキアをはじめとする有力企業が育ち、「マリメッコ」のようなデザインブランドも少なくない。起業も盛んだ。「人が少ないからこそ、一人ひとりの能力を高め、効率を競争力につなげる取り組みが欠かせない」と、堀内氏は小国ゆえの事情を説明する。国民それぞれが生産性や労働効率を意識するようになった、もう一つの理由を、堀内氏は教育に見いだす。「中学3年生になる頃には、納税者意識を持って、社会への貢献を自ら考えるようになる」という。福祉国家を支える働き方は時間をかけて熟成してきたようだ。

フィンランドのやり方を日本の働き方改革に応用するには、具体的にどうしたらよいのか。堀内氏は「個人ベースで始められる取り組みがある」とアドバイスしている。たとえば、「まずは週に1度、定時で終業するといった始め方がある」(堀内氏)。また、プライベートの時間に資格や技能を新たに得る学びの時間を用意すると、「転職に役立つうえ、定時で退勤する動機付けにつながる」。「仕事をやり残して席を立つのは、最初のうちは気がかりかもしれないが、いったん家に帰ってしまえば、意外と忘れてしまえる」という言葉を味方に、「週1定時」を始めてみてはどうだろう。

堀内都喜子
フィンランド大使館広報部プロジェクトコーディネーター。フィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院で異文化コミュニケーションを専攻し修士号を取得。フィンランド系機械メーカーを経て、2013年からフィンランド大使館で広報の仕事に携わる。ライターとしても活動。著書に『フィンランド 豊かさのメソッド』などがある。

フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか (ポプラ新書)

著者 : 堀内 都喜子
出版 : ポプラ社
価格 : 946円 (税込み)

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