電子機器から銅回収 循環型経済はどこまでできる?

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/3/8

リサイクルされるのは5分の1に過ぎない

工場の環境部長ヘンドリック・ロースの案内でリサイクル工程を見学した。ノートパソコンなどの廃棄された電子機器がバケツからベルトコンベヤーの上に落とされ、破砕機へと運ばれていく。これは10以上に及ぶ廃棄物選別の第1段階で、轟音(ごうおん)が響くなか、目の前の光景にあっけにとられた。

手のひらほどの電子基板の破片が所定の位置まで運ばれてくると、一部は深い穴に落ち、残りはまるで意志があるかのように上のベルトへと跳び乗ったのだ。画像解析システムで金属を含んだ破片を自動的に識別し、金属が含まれていなければ空気を噴射して吹き飛ばす仕掛けになっていると、ロースが説明してくれた。

アウルビス社は、選別や回収をした鉄、アルミニウム、プラスチックをメーカーに売り、銅とその他の非鉄金属を自社で処理する。

2017年の国連の報告書によると、世界中で廃棄された電子機器のうちリサイクルされるのは約5分の1。同社は米国からも廃棄物を受け入れている。「時々思うんです。高度に工業化が進んだあの国が、こうした資源をなぜ自分たちで再利用しないのでしょう。莫大な価値があるのに」とロース。

しかし、こうした銅を取り巻く状況は、リサイクル全般の困難な課題を映し出していた。精力的にリサイクルしても、その成果は限定的なのだ。アウルビス社が生産する銅のうち、リサイクルによるものは3分の1程度で、残りは新たに採掘されたものだ。

この50年に世界の銅の生産量は4倍になり、依然として増え続けている。化石燃料依存から脱するための設備を造るにも、大量の銅が必要だ。たとえば、巨大な風力発電タービン1基に約30トンもの銅が使われる。

「銅の需要は拡大しています。リサイクルだけではとても足りません」とレイザーは言う。循環型経済の実現にはほかの戦略も必要なようだ。

(文 ロバート・クンジグ、写真 ルカ・ロカテッリ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年3月号の記事を再構成]

[参考]ここで紹介した「世界からごみがなくなる日」は、ナショナル ジオグラフィック日本版2020年3月号の特集の1つです。この号では、野生のミツバチの実態に迫った「ミツバチの秘密」、6年前ナイジェリアで拉致された276人の女子生徒の今をリポートする「誘拐された少女たち」のほか、「マオリの聖なる流れ」「道を拓いた女性たち」など、様々な視点で地球の今をお伝えしています。
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