電子機器から銅回収 循環型経済はどこまでできる?

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/3/8
ナショナルジオグラフィック日本版

「循環ギャップ」という言葉がある。投入された資源量と回収された資源量の差を指したものだ。現在、循環ギャップは減るどころか増えている。2050年までに世界で使用される天然資源は2倍になるとの予測もあり、経済活動の中で循環ギャップを減らすことは喫緊の課題に見える。ナショナル ジオグラフィック3月号では、衣料品、食品、エネルギー、農業、機械、金属など、各分野における循環型経済の現状をリポートしている。

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循環せずに廃棄される物質の量――循環ギャップは、人類の歴史から見れば、比較的新しい問題だ。そもそもの始まりは、化石燃料が産業に利用されるようになった18世紀までさかのぼれる。

化石燃料から安価にエネルギーを取り出せるようになると、原材料もより簡単に採取でき、あとは工場に運んで完成した製品を各地の市場に輸送できるようになった。拡大は続き、この50年で世界の人口は2 倍以上になったが、生産活動に利用される物質の量は3 倍以上増えている。

衣料品、食品、エネルギー、農業、機械など様々な産業で循環型経済を考える必要があるが、まずは金属の現状を調べてみよう。

小規模ながら、人類が初めて自然の循環から外れたのは、実は18世紀の産業革命よりも前にさかのぼる。古代ローマの人々が下水道という厄介な仕組みを発明したときのことだ。資源循環の専門家なら誰でも、汚物は畑に返すべきだと言うだろうが、ローマ人はこれを川に流す方式を編み出したのだ。

古代ローマ人はイベリア半島の鉱山から銅を採掘する一方で、征服した民族の青銅像を溶かして武器を作った。銅は汚物と違って希少価値があるため、当時も今も真っ先にリサイクルの対象にされる資源だ。

ドイツ西部ルール地方の工業都市リューネンにある、ヨーロッパ最大手の精銅会社アウルビスの構内に入ると、花壇に置かれた大きなレーニンの胸像が目に入った。1990年の東西ドイツ統一後、東ドイツ各地からレーニン像がリサイクルのためにこの工場に運び込まれたが、この胸像はその名残だ。同社はまた、世界最大手の銅のリサイクル会社でもある。

銅はプラスチックなどと違い、同じ品質のまま何度でもリサイクルできる、文句なしに循環型の物質だ。工場では今も配管やケーブルなどから大量の銅を回収しているが、近年では銅の含有量がはるかに少ない廃棄物も扱わざるをえなくなったという。

ヨーロッパでは、ごみの処分方法が埋め立てから焼却へ変わったため、金属を含んだ焼却灰が大量に出るのだ。

「ごみ箱に携帯電話を捨てる人がいるからです」と話すのは、副工場長のデトレブ・レイザーだ。

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