ペンギンがいるのは? 南極と北極の動物、なぜ違う

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/3/1

長いらせん状の牙を持つことから、海のユニコーンとも呼ばれるイッカクは、多くの人に愛されている北極の動物だ。ネズミイルカ科の仲間と同様、数十~数百頭で泳ぐ姿が目撃される。

イッカクは年間を通して北極圏にとどまり、夏は氷のない沿岸で過ごす。硬い氷に遭遇したら、沖に出て海に潜り、流氷の下で餌を食べる。呼吸する際は、氷の割れ目や穴を使う。

イッカクのオスたち。カナダのランカスター海峡で撮影。ホッキョクグマと同様、北極圏の流氷の中で生きられるよう進化した(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

南極にサメはいないが、北極にはたくさんいる

南極の海はサメには冷たすぎるが、北極海では、5種を超えるサメが活動している。なかでも、ニシオンデンザメは最も謎めいた種の一つで、生きた姿が初めて写真に収められたのは1995年だ。少なくとも272年は生きることができ、不用心な魚やアザラシからホッキョクグマやトナカイの死骸まで、生死にかかわらず何でも口に入れる。

南極圏で生きられる魚もいる。ノトテニアの仲間は体の凍結を防ぐ「凍結防止剤」として、血液中で氷の結晶と結合するタンパク質を体内でつくりだす。なかでもコオリウオ科のスイショウウオは赤血球を持たない唯一の脊椎動物で、血液が透明で、幽霊のような外見をしている。

シャチはどちらにもいる

シャチは世界中の海に分布する。北極と南極の周辺も例外ではない。南極の海には、約7万頭が生息。食性は「タイプ」によって異なる。コサトカ・コンサルティングのアイサート氏によれば、タイプAはクジラやゾウアザラシ、Bはアザラシやペンギン、Cは魚を捕食するという。

アイサート氏は氷床の下で、1600メートル以上の深さを泳ぐタイプCのシャチの群れを観察したことがある。空気を必要とするシャチにとっては危険な行為だ。「氷の下を自由に移動できる並外れたナビゲーション能力を持っているのでしょう」

ホッキョクグマのスパーリング。カナダのハドソン湾で撮影。北極の氷上で生きられるよう進化を遂げた大型捕食動物だ(PHOTOGRAPH BY FRANS LANTING, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

南極のアザラシは余裕しゃくしゃく

北極と南極の両方に多くのアザラシが生息し、春が来ると、海岸線に固定された「定着氷」の上で繁殖する。

特に、南極のアザラシは繁栄しており、世界の鰭脚(ききゃく)類の実に半数を占める。おそらく陸上に捕食者がいないためだろう。一方、北極のアザラシは食物連鎖における立場を意識しながら生きている。ホッキョクグマ、ホッキョクギツネ、ホッキョクオオカミ、ヒトといった陸生の捕食者たちがいるからだ。

カナダのスターリング氏は、南極のウェッデルアザラシと生態がよく似た北極のワモンアザラシを比較。「最も明白な違いは、南極では、氷に横たわるアザラシに歩み寄ることができるということです。陸上に恐ろしい捕食者がいないためでしょう」。一方、北極では、ワモンアザラシに近づこうとしても、あと100メートルくらいのところで逃げられてしまう。

また、ウェッデルアザラシは氷の上に子どもを産み落とすが、ワモンアザラシは雪に覆われた巣穴に隠す。

1年のうちに往復する動物も

キョクアジサシは世界で最も長い距離を渡る鳥だ。毎年、繁殖地のグリーンランドと南極を往復し、移動距離は毎年6万5000キロ近くに達する。

これほど遠くまで移動する理由は不明だが、完璧な旅を目指していることは間違いない。30年生きると仮定した場合、生涯で240万キロくらいは苦もなく飛んでしまう。これは地球と月3往復分に相当する。

次ページでは、南極に生息する様々な動物たちの姿を、10点の写真でご覧いただこう。

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